ピースボートで本当に洗脳されるのか、元参加者が検証してみた

「ピースボートに乗ると左翼団体に洗脳される」。これはネットでまことしやかに飛び交う噂だ。その噂が本当かどうか今回は検証する。いったいどういう人が洗脳されやすいのか。どういう風に人は洗脳されるのか。ピースボートでそれは当てはまるのか。ぜひ、自分の目で確かめてほしい。


ピースボートに乗る人は洗脳されやすいのか?

まず、一体どういう人が洗脳されやすいのかを検証していく。ネットで調べてみると、「洗脳されやすい人の特徴」というのはいろいろあるらしいが、いくつかのサイトに共通して書かれていたのが次の6つだ。

・日々の生活に強いストレスを感じている

・まじめ

・人を疑うことを知らない

・自信過剰

・一人で結論を出せない

・スピリチュアル好き

この6つがピースボートの参加者に当てはまるか検証していこう。

日々の生活にストレスを感じている?

いきなりだが、これは結構当てはまる人が多いと思う。学校だったり、仕事で行き詰ってしまい、ピースボートに参加するという人は僕個人の実感としては結構多い。

まじめ?

みないい人である。約束はちゃんと守るし、頼まれた仕事はちゃんとやる。

しかし、「社会のレールを疑わない」という意味でまじめかどうかと聞かれたら、「不真面目」と答えざるを得ないだろう。

アートだったり、芸能活動だったり、海外留学だったりと、世間の常識などなんのその、ぶっ飛んだ生き方をする人が多い。だいたい、「仕事辞めて船に乗りました」なんて言ってる時点でぶっ飛んでいるのだ。

一方で、国際情勢や社会問題に強い関心を持つ人も多いのもまた事実。「真面目」という観点では「人それぞれ」という答えになるだろう。

人を疑うことを知らない?

これはあまり当てはまらない。ピースボートに乗ろうとする人は、だいたいが「左翼団体がどうとか、評判悪いけど、この団体、大丈夫かな?」という思いを抱いて説明会に行く。

ボランティアスタッフとして活動していればなおさら。ポスター貼りで心無い言葉を浴びせられ、人間不信になるなど一度や二度の話ではない。

おまけに、寄港地に乗ったらタクシーでぼったくられ、常にすりに警戒する。特に、女の子と一緒にタクシーに乗った時の警戒心はMAXに達する。

人を疑うことを知らない人間は、寄港地で間違いなく死ぬ。運が良ければ、財布を無くして帰ってくるだろう。

自信過剰?

『俺が騙されるわけないだろ』と思っている人ほど騙されるらしい。これは、本当に人それぞれだと思う。

一人で結論を出せない?

これに関しては全く当てはまらない。「地球一周したい」というと、だいたい家族も友人もひっくり返る。

むしろ、「家族の説得」がどうやら地球一周の壁の一つらしい。

つまり、多くの人が一人で地球一周を決めるのだ。

僕に関していうと、家族には全くないしょで資料を取り寄せた。

ピースボートの参加者は、行動力の塊みたいない人が多い。自分の意志でズバズバ決めて、行動していく人ばかりである。

スピリチュアル好き?

これもまた人それぞれ。少なくとも、船内で宗教の勧誘などの活動をすることは禁じられている。

こうやって見ていくと、「ピースボートに乗る人は洗脳されやすいか」の答えは、「人それぞれ」だと思う。むしろ、一般社会よりやや騙されにくい人たちのような気もする。

ピースボートは洗脳しようとしているのか?

では、ピースボートの団体の方はどうだろうか。

これまた調べてみると、洗脳のプロセスとして次の6つが挙げられるらしい。

・寝不足にして思考を鈍らせる

・怒鳴って人格を否定される

・不安にさせる

・依存させる

・日常から切り離す

・刷り込む

この6つがピースボートに当てはまるか検証していこう。

寝不足に追い込む?

これは完全に当てはまらない。何時に起きて何時に寝ようが個人の自由だ。僕はよく昼寝をしていた。

深夜12時くらいになると、居酒屋を除き、もうみんな寝ている。夜更かししてても楽しいことなどない。深夜アニメも深夜ラジオもないのだ。

起きるのは人それぞれ。朝日を拝もうと早起きする人もいれば、10~12時台に起きてくる人もいる。

ただし、船内チームによっては寝不足になるチームもある。

怒鳴って人格を否定する?

ピースボートの関係者から怒鳴られたことはない(怒られたことならあるけど)。もし、怒鳴られた人がいるとすれば、それは何か事件を起こした時くらいだろう。

人格を否定するどころか、何か特技がある人は一般社会よりも褒められやすい環境だと思う。

不安にさせる?

これは当てはまるだろう。社会問題系の企画やツアーに行った場合、不安どころか、打ちひしがれて帰ってくる人もいる。

ただ、それを消化する時間は山ほどある。

依存させる?

船を降りる日が近づくと、「終わってほしくない~!」となる。これを依存と呼ぶなら、学校の卒業間際の「卒業したくない~」も立派な依存と言えるだろう。

だが、現実は船を降りた後、皆それぞれの道を進んでいく。「船の生活に依存して抜け出せない」や「左翼団体の活動に依存して抜け出せない」といった事例は、まだ聞いたことがない。

だいたい、ピースボートで働いている人たちも、一生の仕事としているよりは、他にやりたいことが見つかったらそっちへ行くというスタンスの人が多いようにみられる。実際、ピースボートをやめて別の活動を始めたという元スタッフの話はかなり聞く。「依存」という観点からは当てはまらないだろう。

日常から切り離す?

これに関しては、ピースボートほど人を日常から切り離す団体などあるまい。日常はおろか陸上から切り離して、テレビもネットも見れない。「見せてくれない」のはなく、「そもそも電波が届かない」のだ。外部との連絡も取れない。これまた「連絡させてもらえない」のではなく、「そもそも電波が届かない」。カルト教団や変な左翼団体がかわいく見えるほどの隔離っぷりだ。

刷り込む?

確かに、社会問題を扱った企画は多いし、左翼的な人の方が圧倒的に多いのも事実だ。

だが、何らかの答えを押し付けるようなことはほとんどない。

「情報は与えたから、あとは自分で考えて答えを出せ」というスタンスだ。

考える時間も、議論を戦わせる相手もいっぱいいる。

「刷り込む」という観点からは、「グレー」という答えが適切だろう。

こうやって見ていくと、「不安にさせるような情報をたくさん提示する」という意味では洗脳の条件を満たしている。

しかし、「相手の思考力を奪う」という意味では全く満たしていない。

確かに、日常と地上から隔離されてはいるが、その分、参加者がバラエティに富んでいる。むしろ、多様な価値観、考え方に触れるいい機会だろう。

ピースボート程度で洗脳されるような人間は、おそらく地球上のどんな団体・会社・宗教に行ってもあっさり洗脳されて帰ってくるだろう。

むしろ、ブラック企業の方がよっぽど怖い。寝不足の頭に怒鳴って、刷り込んでくるのだから。まず、思考力を奪ってから、じわじわと会社色に染めていくわけだ。

ピースボートにおいて、洗脳よりよっぽど注意しなければいけないこと

ピースボートに興味がある人に僕から言いたいのは、洗脳よりもよっぽど注意すべきことがある、ということ。

それは、船を降りた後の「ポジティブシンキング」。

船に乗ると、ピースボートという団体うんぬんの前に、360度どこまでも広がる青い海を見た時点で価値観が吹っ飛ぶ。寄港地に降り立つたびに、「日本の常識」がいかに狭いものなのかを思い知らされる。

ピースボートが与えてくる情報よりも、船内生活や寄港地での自由行動中の体験の方がよっぽど強烈だろう。要は「船旅」のインパクトが強いのだ。

また、船の中ではイベント運営、ミュージカル、音楽活動、映像作りなど、さまざまなことにチャレンジできる。

「日本の常識がぶっ壊れる体験」と「いろんなことにチャレンジした体験」が合わさると、「世間の常識にとらわれず、何でもできる!」、「いっそ、日本を、世界を変えられるんじゃないか?」という、自己啓発本のようなポジティブ全能感を抱く人が多いようにみられる(ただし、思考能力を奪うほどではないので、安心してほしい)。

かくいう私も、その一人だった(笑)。

それは決して悪いことではない。特に、それまで自己評価が低かったり、目標が持てなかったりした人の場合はむしろ、「前向きになった」『明るくなった』と評されることもある。

だが、程度の問題である。何事も「ほどほどに」が大事なのだ。

前向きになるのは大事だが、卑屈だったころの自分を忘れてはいけない。

僕はこれを、「過去の自分が背中から銃を突き付けている」と表現している。根拠もなくポジティブなことを言ったりして、「輝いている自分」や「今、幸せな自分」をアピールしようとすると、かつての自分が背中から銃を突き付けて、「なんかかっこいいこと言ってるけど、もしかして俺のこと忘れちゃった? 卑屈で、嫉妬深くて、死にたがり。それがおまえだろ?」とブレーキをかけてくれる感覚。

だから、僕は「昔はダメダメだったけど、今はこんなに輝いています」という人があんまり好きじゃない。ブレーキのない自転車みたいなものだと思っている。

人間である以上、ダメダメな部分が残らないわけがない。むしろなくなったら、「悟りを開いたぞ!」と言って、「阿闍梨」「如来」を名乗ってもいいと思う。

実際は、ダメダメな部分が残っておるにもかかわらず、気づかない、隠している、という人が、この手のタイプには多いと思う。

それよりも、「昔はダメダメだったけど、今は昔より前向きです。でも3日に1日ぐらいは落ち込んで死にたくなります」という人の方が好きだ。

ただ、「ピースボートのに乗れば、みんなめちゃくちゃ前向きになるのか?」と聞かれれば、答えは「程度による」だ。「少し前向きになった」人もいるし、「めちゃくちゃ前向きになった」人もいる。当然だ。同じ船に乗っていても、人によって見える景色は全然違うのだから。

全員が全員、「ポジティブバカ」になれるほど、世の中は、船旅は甘くない。

まとめ

・ピースボートに乗る人は、どちらかというと洗脳されにくい。

・ピースボートは確かに左翼的な情報は与えてくるが、思考力を奪うようなことはしないので、これで洗脳される人はよっぽどである。

・むしろ、前向きになりすぎることに注意した方がいい。

とりあえず、僕の周囲で「船を降りた後、憑りつかれたように左翼団体の活動に邁進している人」はまだ見たことがない。

投稿者: ノック

民俗学ZINE作家。 「バズらないモノづくり」をテーマとする「ノンバズル企画」を主宰。民俗学専門ZINE「民俗学は好きですか?」を企画・執筆・製本・販売しています。「民俗学とは『生きること』を探求する学問」をテーマに、民俗学の魅力をわかりやすく、面白く、奥深く紹介していきます。

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