毎日がタダで食べ放題? ピースボート船内の食事は実はこんな感じ

人間にとって一番大切なのは食事である。旅において大切なのも食事である。旅先でどれだけ素敵な景色に巡り合おうと、船内でどれだけ素敵な仲間に恵まれようと、ご飯がおいしくなければ台無しだ。今回はピースボートの船内の食事について書こう。ピースボートの船内は、毎日が実は……。


ピースボート船内の食事ってまずい?

ネットではたまに「ピースボートの食事はまずい」と書かれた文章を見る。

何も知らないアンチが書きこんでいるのかと思いいや、昔のピースボートの食事は本当にまずかったらしい。スタッフが「確かにまずかった」と言っていたのだから。

「昔の」と書いたのは、2017年現在ピースボートが使かってるオーシャンドリーム号よりも前の船の話だからだ。

僕はオーシャンドリーム号の食事しか知らない。

そしてオーシャンドリーム号の食事は……、美味い。安心してくれ。

ピースボート船内のレストラン

まず、ピースボートの船内には三つのレストランがある。そう、三つもあるのだ。これを理解していないとこの後の話はさっぱり分からない。

まずは4階にある「リージェンシー」。4回は乗客が立ち入れる一番下のスペースで、4階で乗客が立ち入れるのはこのリージェンシーだけだ。イメージはホテルの大きな食堂や結婚式場に近いかもしれない。三つのレストランのうちで一番豪華だ。

席はスタッフが案内してくれる。逆に言うと、こちらでは選べないのだが、知らない人と話せる機会だったりもする。

残る二つは9階にある。9階の中央にあるのが「リド」。真ん中は屋根がなく、プールがあってプールの周りをいすとテーブルが囲んでいる。

もう一つが9回後方の「パノラマ」。こちらは屋内だが、外にもいくつか席がある。

9階の二つは席が自由に選べる。

これらのレストランでの食事代は、すでに船代に含まれている。船内にいる限り、食費の心配をすることは全くない。

ピースボート船内の朝ごはん

まずは朝である。

4階のリージェンシーでは和食が食べられる。ご飯に味噌汁、しゃけの切り身や玉子焼きなど「ホテルで出てくる和食の朝ごはん」を想像してもらえるといい。

一方、9回の二つのレストランでは洋食を出している。トーストにスクランブルエッグなど。こっちは「ホテルで出てくる洋食の朝ごはん」を想像すればいい。

ちなみに、どちらも食べ放題である。朝から腹いっぱい食べようとする人は少ないと思うが。

朝ごはんのこぼれ話

エジプト、スエズ運河での朝。左側にアフリカ大陸の安定陸塊、右側にアラビア半島の砂漠が見えるという、この上なく贅沢な状態で朝ごはんである。

僕は仲の良いグローバルスクールのメンバーと一緒にリド(9階の屋外)で食事をとっていた。

ただ、スエズ運河の上というのはいつもこうなのか、ハエが大量発生していた。

うっかりハエを口にしないように気を付けながらの食事が強いられていた。エジプトの人たちは大変だなぁ、と思った朝だった。

ピースボート船内の昼ごはん

さて、お昼ご飯である。

4階のリージェンシーではよく、チャーハンが出ていたのが印象に残っている。普通のチャーハンだったり、キムチチャーハンだったり。

また、寄港地に停泊中でもリージェンシーは営業している。もちろん、ただなのでお金の節約にはもってこいだ。

こういうときはおにぎりや唐揚げといったメニューが多い。リージェンシーでの昼食を待ってから寄港地を散策したこともある。

9階中央のリドは麺料理が出てくる。うどん、そば、ラーメン、タイのフォーなどなど。若者に人気だ。

9回後方のパノラマではカレーだったり白身のフライをパンにはさんだり、フライドポテトだったりと洋食系だ。

ちなみに、どれも食べ放題である。そして、どこか一つのレストランしか行けないというルールは存在しないので、余裕があるものはリドとパノラマをはしごする、なんてこともよくある。

昼ごはんのこぼれ話

リドのラーメンは人気メニューだ。日本で食べるラーメンに比べればそれほどでもないのだが、とにかく船内でラーメンが食べられる機会はそうそうないので、大人気だ。割と早い段階でなくなってしまう。

ある日、8回のフリースペースでぼんやりしていると、「地球大学」という有料プログラムの受講生二人が声をかけてきた。「地球大学」とは船で地球を一周しながら、貧困や戦争など、世界のいろいろな問題について学ぶという有料プログラムだ。彼らはまいにち2時間ほど講義を受けている。

さて、僕に声をかけた二人は「我々は今、ある社会問題についての問題提起をするために、みんなの署名を集めている」と切り出した。いったい、どんな問題を扱っているのだろうか。貧困? それとも平和? 差別問題?

彼らが取り組んでいる問題、それは「地球大学生はリドのラーメンが食べられない、これは不公平だ!」という問題だった。

地球大学生はまいにち13時まで講義を受けている。ところが、講義が終わってリドに行ってみると、もうラーメンがなくなっているのだ。

同じ食事代を払っているのに、地球大学生だけラーメンが食べられない。これは不公平だ!

だから、ラーメンの日はなるべくおかわりをせず、地球大学生の分を残しておいてほしい!

というわけで、賛同してくれる人の署名を集めている、との話だった。

僕は署名した。「確かに、おいしいラーメンが食べられないのは不公平だ」と素直に思ったのと、「お前ら、よくそんなくだらねぇ話題で署名を集めよう、という気になったな。それこそ平和とか差別とか、もうちょいましな話題あっただろ?」という彼らの心意気に感動?したからである。面白ければそれでいいのだ。

あれ以来、僕はリドでラーメンのおかわりはしていない。

ピースボートのティータイム

午後三時になるとパノラマでティータイムがある。一口サイズの洋菓子と一緒にお茶を楽しめ、いつも大人気だ。

何か打ち合わせがあるときなどは「じゃあ、ティータイムでもしながら」と呼び出すのにとても便利だ。

ちなみに、無料のうえ食べ放題である。

もっとも、僕はあまり好きじゃなく、わざわざ売店でスコーンを買って(有料)食べていた。スコーンといっても洋菓子ではない、バーベキュー味とかチーズ味とかある、スナック菓子の方だ。

ピースボート船内の晩ごはん

夕食の目玉は何と言ってもリージェンシーである。豪華客船の旅っぽい、シェフが腕によりをかけた豪華な食事を楽しめる。これは残念ながら、食べ放題ではない。

また、誕生日の人は部屋にバースデーカードが届けられて、それを持っていけばバースデーケーキが出てくる。これは本人だけでなく、一緒に来たお友達も食べられる。僕も船内で誕生日は迎えなかったが、仲間のおこぼれで何回か食べた。

ただ、人によってはそういった上品な味が口に合わず、もっと庶民的などんぶり飯が食べたい、という人もいるだろう。

そんな奴いるのかと思うだろうが、そんな奴の本人がいまこの記事を書いている。

そういう人は9階のリドに行けばどんぶり飯が食べられる。スタミナ丼や牛丼のようなボリュームたっぷりのどんぶり飯だ。

こちらは食べ放題である。

ちなみに、この時間、「なみへい」という居酒屋として営業している。お酒はもちろんいわゆる居酒屋料理が食べられ、フライドポテトやたこ焼き、ラーメン、たまに新鮮なお刺身などが食べられるが、これはすべて有料なので注意すること。

酒を飲むか飲まないかで船内の生活費はだいぶ変わってくる。

晩ごはんこぼれ話

1日目の晩ごはんは何かどんぶり飯だった気がするのだが、船酔いがひどく、満足に食べられなかった。船内では腹が減っていなくても、ご飯は食えると気に食うべし。

晩ごはんこぼれ話

さて、さっきも書いたようにリドの夕食はどんぶり飯が基本だ。また、リージェンシーでは和食が食べられる。

そのため、地球一周の108日の中で、和食やごはんが恋しくなったことはない。よく、海外旅行だと和食やごはんが恋しくなると言うが、ピースボートの船内なら毎日食べられるのだ。

恋しくなったのは、チェーン店系の料理だ。

パナマのクナ族という部族のコミュニティを訪れたツアーの帰りのバス。横浜を出港して2か月がたていた僕と友人の女子二人は、「日本に帰ったら何が食べたい」で盛り上がっていた。

僕が挙げたのは地元・大宮のラーメンとうどん(うどんは「楽釜製麺」というチェーン店のものだ)。この「日本に帰ったら何が食べたい」という話題はとても盛り上がったと記憶している。

その日の夜、夢に大宮駅が出てきた。どうやら、よほど食べたかったらしい。

これが、地球一周の108日の中で僕が唯一、「日本に帰りたい」と思ったエピソードである。

船内のその他の食事処

実は、この三つのレストラン以外にも食事をができる場所がある。全部8階だ。あと、全部有料なので注意すること。

まずは、8階中央の「カサブランカ」。昼間はカフェとして、夜はバーとして営業している。カップめんもここで食べられる。

その後ろにあるのが「ピアノ・バー」。その名の通り、ピアニストの演奏を楽しみながらお酒が飲める。

8回後方にあるのがクラブ「バイーア」。ここでもお酒とカップめんが楽しめる。

バイーアの最大の特徴は「カラオケ機器がある」ということであろう。

ちなみに、カラオケ機器は一台だけ。自分の番が来るとクラブの中央に置かれたカラオケ機の前に立って、他のお客さんに囲まれながら歌うこととなる。

それでも、船内で唯一カラオケができる場所である。このカラオケとカップめん目当てで、僕は割とバイーアに入り浸っていた。

たぶん、船内の乗客は「なみへい」派と「バイーア」派にある程度わけられると思う。

カラオケはいつも多くの人が予約するので、1日2~3曲も歌えればいい方なのだが、何かのイベントの裏とかで一回、仲間内4人ぐらいで占拠したことがある(占拠と言っても、たまたま他のお客が来なかっただけなのだが)。運が良ければそういうこともできる。

また、船内で行われたオークションで友人が「カラオケ独占権」を落札して、仲間内で本当に占拠してしまったこともあった。

さて、8階の最後方、オープンデッキではたまにバーベキュー大会が行われる。これに参加するのは有料なのだが、結構いい思い出になるぞ。

夜食こぼれ話

以前、ピースボート地球一周の船内に持っていくべき、日本で簡単に手に入るアレとは?という記事にも書いたのだが、船内でカップめんは非常に人気だ。

寄港地でもカップめんは売っているが、現地の人向けの味なので、日本人の口には合わない。特にバルセロナで見た日清のカップヌードルは、パスタ風の味付けがされているような感じだった。

ただ、このカップめんはクルーズ終盤には売り切れてしまう。自分でいくつか持ち込んでおくことをお勧めする。

投稿者: ノック

民俗学ZINE作家。 「バズらないモノづくり」をテーマとする「ノンバズル企画」を主宰。民俗学専門ZINE「民俗学は好きですか?」を企画・執筆・製本・販売しています。「民俗学とは『生きること』を探求する学問」をテーマに、民俗学の魅力をわかりやすく、面白く、奥深く紹介していきます。