ピースボートのポスター貼り3000枚達成した俺がコツを伝授しよう

ピースボートのポスターは、約3000枚貼れば100万円割引される。僕はポスターを約3000枚貼った結果、ピースボートの船代が全額割引となった(もともとの船代は99万円)。船代に関しては1円もピースボートに払っていない。そんな僕が、今回、ポスター貼りのコツを伝授しようと思う。


ピースボートのポスター貼りにはいろんなタイプがいる

僕がポスター貼りをしていたのは約8か月ほど。僕が所属していたのは今はなき「ボランティアセンターおおみや」という、マンションの一室を借りて運営していた、ピースボートの事務所の中でもひときわ小さなところだった。

そこにはいつも通ってくるメンバーが何人かいて(本当に、「何人か」という規模だ)、家族よりも長い時間を共に過ごす。一緒にポスター貼りに行ったことも何回もあるし、ポスター貼りが終わって事務所でのんべんだらりとしたり、週に一度連絡会を行ったりして、他の人がどういうポスター貼りをしているのかもなんとなく聞いていた。

すると、あることに気づく。

人によってポスター貼りのスタイルが違う。

もっとわかりやすく言えば、人によって得意不得意がある、ということだ。

例えば、抜群のコミュニケーション力を武器に交渉を進める人がいる。

一方で、とにかく長距離を歩き、店の数を稼ぐ人もいる。

短期間で信じられない枚数を貼る人もいる。

一方で、枚数よりも、貼らせてもらったお店の人から直接「ピースボートの資料欲しいんだけど」と声をかけてもらうことが得意な人もいる。

また、人によって「この店が得意」とか「こういう時間帯が得意」という人もいる。

人によってポスター貼りのスタイルは千差万別である。

つまり、「ポスター貼りのコツ」というのも、聞く人によって変わってくる、ということだ。

これから話すのはあくまでも「僕が使っていたコツ」である。これを読んだあなたが僕のやり方を試してみたところで、必ずうまくいく、なんて保証は残念ながらできない。ポスター貼りのスタイルが違えば、うまくいかない可能性もある。

それでも、なるべくどんなタイプの人でも通用するであろうやり方を書くつもりだ。

ポスター貼りのコツ① とにかく、多くの店に入る

これは僕の意見、というよりも、一般論に近い。とにかく多くの店に入ること。店の前で「どうしようかな……」と躊躇するくらいだったら、入ってしまえとさんざん言われた。

とはいえ、何でもかんでも入ればいい、というわけではない。例えば、飲食店だったらランチタイムは避け、もっと好いている時間に行く。明らかに今忙しそうにしている店も後回しだ。「いま忙しいんだよ!」と怒られたら元も子もない。

それでも、店に入るのはいつだって勇気がいる。

一番勇気がいるのは多分、「その日最初の店」だと思う。こっちのスイッチがまだ入りきっていないときに店に入る、というのは一番勇気がいる。

逆に言うと、こっちのスイッチが入ってれば、トライしやすくなる。

とにかく、大事なのは「リズム」なのかもしれない。断られても「次だ次!」と前向きに問えらえられるようになれば、リズムよくいろんな店にトライできる。アドレナリンが関係しているのかもしれない。

ポスター貼りのコツ②交渉編 相手の顔を、目線を見て判断する

一般論から言うと、ダメもとで交渉をするべきである。相手が「ウチはちょっと……」と断ろうとしても、「そこを何とか」と食い下がることが大切だ。その結果、交渉に成功した例もいくつかある。

とはいえ、これはコミュニケーション力がある人が成功しやすい、と僕は思う。

しつこく食い下がるとかえってクレームに発展しやすいし、食い下がった結果ダメだったら、時間の無駄になってしまう。

これは「そこを何とか」と言って、嫌われることなく話を勧められるスキルがあってこそ、ともいえる。

僕はそんなスキルないので、あまり食い下がらなかった。

正確に言うと、「食い下がっていい時」と「食い下がっても無駄な時」を見極めていた。

まず、あいさつのときは相手の不信感を一気に取り除くことを心掛けた。

「すいませ~ん、私、NGOピースボートでポスター貼りのボランティアをしているものでして……」

最初に、自分は客ではなく、こういう身分のものだと一気に説明する。お店側の「こいつは何者だ?」という不安を取り除くことが大切だ。

そして交渉に入る。

「こちらのお店のポスター貼らせてもらうことはできないかなぁと思ってきたんですけど……」

僕はここでいったん、話を区切る。この後、「貼らせてもらえませんでしょうか?」的なセリフが続くわけだが、とりあえずいったんここで話を止める。

話しを止めて相手の顔を見る。

慣れているお店なら、この時点でOKをくれる。

そして、「絶対ダメ」な場合は、難色を示す。

難色を示すというのはどういう状態かというと、「そういう顔をしている」ということだ。だいたい、苦笑している。

コミュニケーション力がある人はここで食い下がれるのだろうが、僕は食い下がらなかった。一件に食い下がるよりも、より多くの店に行くために時間を使いたいので、「ダメですか?」と聞き、「ダメです」と言われたら、「あ~、すいません。お邪魔しましたぁ」と引き下がる。

一方で、次のような反応が見られた場合、僕は食い下がる。

それは、「店内をきょろきょろと見渡す」。

これは「どこか貼らせてあげられる場所はないかな~?」と探してくれているのだ。

その結果、「ごめんね。スペースがなくて……」と断られても、これは「最初からダメ! 何が何でもダメ!」のダメではなく、「貼らせてあげたいけど、スペースがない」のダメである。

ここで食い下がる。

「あ、ほんとに、こういうちょっとしか見えない端っことか、トイレとかバックヤードでも全然かまわないので……」

そう言うと、「何だ、そんなところでいいのか」と言って貼らせてくれるケースは結構ある。

ポスター貼りのコツ③技術編 Pカットテープの貼り方

ポスターを貼る道具は次の三つが一般的だ。

①両面テープ

②画鋲

③Pカットテープ

基本は両面テープだ。ガラスなどにつけやすく、剥がしやすい。

両面テープがくっつきそうにない壁には、画鋲で刺して止める。

厄介なのがPカットテープだ。

これは「つるつるした壁には貼ってはいけない」というルールがある。ガラスのようにつるつるしたものに貼りつけると、剥がすときに跡がついて、クレームになってしまうらしい。

Pカットテープをどういうときに使うのかというと、両面テープや画鋲では貼ることができず、なおかつつるつるしていないもの。すなわち、ブロック塀やコンクリートの壁など、ざらざらした壁やでこぼこした壁だ。まかり間違ってもガラス窓焼きの壁に貼ってはいけないし、コンクリートでもつるつるしているのなら両面テープで張っていいと思う。

あくまでも「ざらざら、でこぼこした壁」に貼るのだ。

そして、そういった壁は、Pカットテープといえども簡単には貼りつかない。

こういう時は、親指をテープにぐりぐりと押し付ける。

テープと壁の間の空気をすべて抜き、テープを壁に密着させ、スキマなく貼りつける。そんなイメージでぐりぐりと押し付ける。指圧のイメージに近いかもしれない。

実際、このやり方で、お店の人から「貼ってもいいけど、つかないと思うよ」と言われた壁に見事貼りつけ、「大したもんだ」と褒められたことがある。また、「いつも貼ってもらうんだけれど、壁がざらざらしてて3日も持たない」と言われた壁に僕が貼った結果、1年以上にわたり残ったということもある。

「どんなにざらざら、でこぼこした壁にもポスターを貼りつけられる」というのは、僕が唯一自慢できるポスター貼りの技術だ。

ポスター貼りのコツ④ 3つの強さ

徳にポスター貼り終盤の話なのだが、僕は『3つの強さ』を意識してやっていた。

その「3つの強さ」とは

①打たれ強さ

②粘り強さ

③勝負強さ

である。

打たれ強さとは、断られてもすぐ次の店に飛び込む、という打たれ強さだ。

ポスター貼りとは、まず断られる方が普通だ。

何度も何度も断られるとと心が折れてくる。ポスター貼りをやっていたら、「心が折れる」というのはよく聞く言葉だ。

しかし、夜が更けてくると「帰りの時間」というのも意識しなければならない。それは、自分自身の帰りの時間ももちろんだし、事務所で待ってくれているスタッフの帰りの時間も考慮しなければいけない。

つまり、夜が深くなるほどに、断られて「はぁ……」とため息をついている時間はなくなるのだ。「次だ次!」と切り替えて別の店に行き、なるべく早く全ての店を回ることが大切だ。「どうして断られるんだろ……」という反省会は帰りの電車ですればいい。

次に粘り強さだが、これは「一つの店に粘ること」ではない。さっきも書いたように、僕は相手の顔色を見て、粘れるときに粘るタイプだ。

そうではなく、「その町に店がある限り、アタックする」という粘りだ。

丸一日歩き続けていると足が痛くなり、体力がなくなる。

そんな状況で遠くの方に赤ちょうちんが見える。居酒屋はポスターが貼れる可能性が高い。

「粘り強さ」とは、ここで「なんか遠くに飲み屋が見えるけど、あそこまで行くの面倒くさいな……」と思っても、足を伸ばす、つまり、その町で体力の限りどこまで粘れるか、ということだ。

「こんなもんでいいか」と思わずに、時間の許す限りその町で粘る。それが「粘り強さ」である。

そして最後に勝負強さ。それは、ここぞという時に結果を出す、ということだ。

それは思うようにいかなかった日の翌日とか、「このエリアでこの枚数いかなかったらまずいよ」と言われたときとか、ポスター貼りの残り日数が減ってきて、「今日、50枚貼れなかったら、あとが厳しい」なんていう状況で結果を出す、ということである。

これはどちらかというと精神論に近いのかもしれない。大事なのは、「自分はここぞという時に結果を出せる」と信じることだ。もちろん、実際にそういう経験があって、それを思い出せれば、より強く信じられる。

かなりストイックな話をしたかもしれないが、この『3つの強さ』は、僕が出航1か月前、毎日自己ベストに近い枚数を貼りつづけなければいけない状況に追い込まれたときに考えたことだ。日ごろからこんなこと考えてやっていたわけではない。しかし、追い込まれたときは、「3つの強さ」を思い出してほしい。

ポスター貼りにおいて一番重要なこと

ポスター貼りにおいて一番重要なこと、それは、「あきらめても足を止めないこと」。

用意した枚数の半分も貼れず、「今日はもうだめだ」と思うことはポスター貼りをやっている間、何度も訪れる。

一方で、そう思いながらも店を探して歩き続けたら、結構貼れた、ということも何回かある。

心は諦めてしまっても構わない。それでも足を止めることなく、店を回り続けることが大切だ。

むしろ、とっとと諦めろ、と僕は言いたい。

「絶対あきらめない!」と踏み出した一歩と、「たぶん、もう無理だ」と諦めて踏み出した一歩、どっちも一歩だ。歩幅は大して変わりやしない。「前に向かって歩いている」ということが大切なのであって、どんな気持ちなのかはさほど大した問題ではない。

むしろ、「絶対に諦めない!」と意気込んで歩く方が、体力を使う。疲れる。結果、足が止まる。だったら「どうせ無理だ」と諦めて、なおかつ足を動かした方が気が楽だし、体も楽だ。結果、長時間・長距離を歩ける。

今回書いたのは、あくまでも僕のやり方だ。最初に書いた通り、一人ひとりスタイルが違う。僕の話は参考程度にとどめておいてあまりこだわらずに、どんどんポスター貼りを経験して、自分のスタイルを見つけることが大切だ。

投稿者: ノック

民俗学ZINE作家。 「バズらないモノづくり」をテーマとする「ノンバズル企画」を主宰。民俗学専門ZINE「民俗学は好きですか?」を企画・執筆・製本・販売しています。「民俗学とは『生きること』を探求する学問」をテーマに、民俗学の魅力をわかりやすく、面白く、奥深く紹介していきます。