僕が主催する「ノンバズル企画」は、作品をネットに頼らず、イベントなどでの対面販売を基本としている。
「ネットに頼らない」がノンバズル企画の基本方針の一つだ。
と書くと、大半の人はこう思うはず。
「……じゃあ、このブログは何だ?」と。
「ネットに頼らない」なんて言いながら、ネットを使っているじゃないか。
さらにばらしてしまうと、僕はSNSもやっているし、何ならネット販売も行っている。
ネットに頼らないと言いつつ、ちゃっかりネットを活用しているのである。
だが、よく言葉を見てほしい。「ネットに頼らない」とは言ったが、「ネットを使わない」とは言っていない。
ノンバズル企画を立ち上げた時は、「バズらないモノづくり」を掲げるのだから、一切ネットは使わない、というのも一瞬頭をよぎった。
でも、たとえば、僕の住む埼玉から遠く離れたところに住む、民俗学に関心がある少年少女が、何かのきっかけで僕のことを知り、「ノックって人が作っている民俗学専門ZINEを読んでみたい!」と思ってくれるかもしれない。
なのに、販売方法が「首都圏での手売りのみ」だったらどうだろう。せっかく民俗学に興味を持ってくれた若者の未来を、一歩遠ざけてしまうかもしれない。
「悪いけど、このZINEは首都圏在住の人用なんだ」なんてスネ夫みたいなこと言えない。
そう思ったので、ネットショップを開設した。
じゃあ「ネットに頼らない」というのはどういうことなのか。
それは、「ネットに力を入れない」「ネットに振り回されない」ということ。
すなわち、「ネットに価値観を支配されない」ということだ。
ネットショップは作ったし、ブログもこうして書いている。
だけど、検索上位に来るためのSEO対策とか、PV数を上げるためのSNSを使った宣伝とかは、やらない。そういう「ネットで人気になること」に価値を置いていないのだ。
なんなら、SNSにブログの全文をアップしちゃう。
SNSでブログの全文が読めてしまうと、当然、ブログの方には来ないので、ブログのPV数にはつながらない(そもそも、SNSにブログへのリンクを貼っていない)。
だが、重要なのは書いた記事を読んでもらうこと。読んでもらえるのであれば、その場所がブログ本文だろうがSNSだろうが関係ない。
逆に、PV 数だのSEOだのと言った数字にこだわると、どんどん記事の中身がなくなる。
WELQ問題なんかがその一例だろう。バズることだけを追い求めた結果、低質な記事が大量に作られてしまったわけだ。
価値があるからバズるのであり、バズるものに価値があるわけではない。
だが、ネットに価値観を支配されると、「バズるものに価値がある」と考えるようになる。その結果、「まず、バズること」が念頭に置かれてしまう。
だけど、まず価値があるものを作るべきだ。バズるバズらないはその後の評価にすぎない。
だから、ノンバズル企画はネットに頼らない。ネットに振り回されない。
ネットはあくまでも「道具」にすぎない。ネットを使って販売したり宣伝したり発信したりしても、あくまでもネットは「道具」。PV数とかフォロワー数とかいいねの数とか、そんなのは追い求めないし気にしない。
まず求めるべきは、作品そのものの価値である。質である。そしてその価値ってやつは、たくさん評価を集めればいいというわけではない。たとえ1000人に批判されようが、たったひとりに「でも、私は救われました」「僕はこれで変わりました」そう言ってもらえれば、それがその作品の「価値」である。
そのたったひとりに出会う場所として、たった一つの価値を見つける場所として、ネットという空間があるにすぎないのだ。