3回目の文学フリマ

僕にとって3回目の文学フリマが終わりました。

目標としていた部数の8割以上を売り上げ、悪くはない結果です。

一方で、足を止めてもらうことの難しさ、立ち読みからの購入へのハードルの高さ、というものを改めて実感しましたね。

自分のブースの前をスルーする人たちに「なんでスルーするんだよー」と思いつつも、いざ自分が客として会場を回った時は、ほぼすべてのブースをスルーするという、まったく同じことをしていました。そりゃ、スルーするよね。何個ブースがあると思ってんだよ。

実は、今回の文フリの収穫はそこにあったんです。「いくつ売れたか」「どんな人が買ったか」だけじゃなくて、「どんな人が足を止めなかったか」「どんな人が立ち読みだけで買わなかったか」までもがよくわかったのです。

そして、「買ってくれた人」「立ち読みだけの人」「スルーした人」の性別・年齢層がはっきりちがうこともよくわかりました。

3時間ぐらいブースに座っていると、「この人は足止めないだろうな~」とか、「この人は立ち読みしてるけど、買ってくれる可能性は30%くらいかな」というのがわかってきます。

となると、「8割」を「完売」にするための道というのも見えてくるわけで「スルーしただけの人」よりも「立ち読みする人」にどうアピールするかを考えていけばいい。

こういうことは、ネットだけでやってたらわからないんだよなぁ。「いくつ売れた」とか「どの層に売れた」はネットでもわかるけど、「どんな人が買わなかった」「どんな風に選ばれなかったか」はネットではわからないんですね。

ネットの売り上げだけだと「画像見ただけでスルーした人」と「他の人のレビューとかも読んで買うのをやめた人」は全部「買わなかった人」と一緒くたにされるし、「PV数」や「再生回数」では「サイトや動画を見たけど、つまらなくて、途中でやめた人」までは反映されない。

たぶん、20年近く続く「出版不況」の原因の一つも、そこにあるんじゃないですかね。

だって、出版って「企画・編集する人」と「書く人」と「売る人」が別々じゃないですか。

編集者は原稿に口を出せるから、出版社と作者は連係がある程度とれるかもしれないけど、出版社が書店での売り方に口を出すわけでも、書店でのお客さんの動向をつぶさに見ているわけでも、ない。だから、書店でお客さんがどう動いているかなんて、把握してない。

マーケティングはやってるんだろうけど、そこには「もう少しで買ってくれそうだったけど、買わなかった人たち」みたいな微妙なポジションの人は反映されない。

でも、今回の文学フリマでお客さんを見ていてよく分かったのは、さらに売り上げを上げようとしたら、「すでに買ってくれる人たち」だけでなく、「もう少しで買いそうだったけど、買わなかった人たち」のような微妙なポジションにもっとアピールしなければいけないな、と実感したのです。

たぶん、世の中の「伸び悩んでる人たち」の多くは、「足を止めなかった人たち」のことを全く考えないから、伸び悩むのではないでしょうか。「足を止めないなんて、あいつらバカだなぁ」ぐらいに思ってるのかもしれない。

選挙演説とかそうじゃない。駅前に人だかりができて「これだけの人が関心を持っています!」ってアピールするけど、実は圧倒的大多数だった「足を止めなかった人たち」の方を全くカウントしてない。

で、次に何を言い出すかと言えば「もっと政治に関心を持とう!」。

それを言うなら「俺たちもっと関心を持たれる努力をしなきゃ」じゃないかしら。

とにかく、「足を止めなかった人たちにもっと注目する頃」が大事だと、痛感した文学フリマだったのでした。

投稿者: ノック

民俗学ZINE作家。 「バズらないモノづくり」をテーマとする「ノンバズル企画」を主宰。民俗学専門ZINE「民俗学は好きですか?」を企画・執筆・製本・販売しています。「民俗学とは『生きること』を探求する学問」をテーマに、民俗学の魅力をわかりやすく、面白く、奥深く紹介していきます。