サッカーW杯のカタール大会が終わってしばらくたちますけど、今回はなかなか興味深かったです。
結果的にはアルゼンチンが優勝したけど、10年ぐらいたってカタール大会ってどんなだっけと言われた時に、きっと僕が思い出すのは、メッシでもエムバペでもなく
「モロッコ、すごかったなぁ」
だと思います。
日本もドイツとスペインを下して死のリーグを抜け出し、クロアチアとPK戦にもつれこんだ。
まあ正直な話、日本代表なんて勝とうが負けようがどうでもいいんですけど(僕にとっては32か国ある出場国の一つに過ぎない)、ただ、今回の日本代表はなかなか興味深いんですよ。
スターが、いないんですよ。
もちろん、点を取った選手は注目されやすいですけど、誰か中心になって突出して活躍した選手がいるかと考えると、特にいない。
大会後の報道を見てても、メディアによく出るのは、キャプテンの吉田とか、ベテランの長友や権田とか、森保監督とか、要はしかるべきポジションの人が代表して出てるくらいで、それこそメッシやエムバペ、ポルトガルのクリロナみたいな、その国を代表するようなスターやエースは特にいない。
これが何を表しているかというと、「ひとりの天才の力・個の力で勝ったんじゃなくて、チーム全体の力で勝った」、ってことなんですよ。
ドイツ戦もスペイン戦も、相手と対等に渡り合えたかと言ったらそう言うわけじゃない。やっぱり相手の方が上手くて、ボールぜんぜん取れなくて、攻められ続けてるんだけど、なんとか耐え忍んで、1失点で押さえて、少ないチャンスをものにして勝つ。
つまり、守備が決壊していたら絶対にできない勝ち方なんです。守備って一人のスーパースターやファンタジスタにような個の力でどうにかなるものじゃなくて、戦術、約束事、全員が連動する、そういうことが大事なんです。守備が上手くいったということは、チーム力が良かったということ。一人のスーパースターがドリブルで切り裂いてシュートをねじ込んだ、そういう勝ち方じゃなかったはず。
快進撃を見せたモロッコだって、一人で点を取りまくった天才がいたわけじゃない。チームとして強かった。実際、守備はめちゃくちゃ硬かったです。
結局、天才メッシを擁するアルゼンチンが優勝して、「メッシはすべてを手に入れた」って言われてますけど、僕はむしろ「10代のころから天才と言われ続けたメッシですら、ワールドカップを制するのにここまで手間取る、サッカーは一人の天才の力でどうこうなるスポーツじゃない」という風に映りました。
でも、この「一人の天才の力ではどうにもならない」こそチームスポーツの醍醐味じゃないですか。選手それぞれに得意不得意があって、それぞれの選手がそれぞれのポジションでそれぞれの特技を発揮して勝つ。
一人で何でもできるんだったら、そもそもチームスポーツである意味がない。一人でやればいいじゃん。そういう競技もいっぱいあるよ。
オシム監督なんて、「ファンタジスタはいらない」とはっきりと言ってました。実際、オシムサッカーは全員が連動してチームとしてかつ、そういうサッカーでした。
なんだか最近、その辺がおろそかになってる気がします。チームスポーツなのに、個人の力ばっかり注目される。
一人が何本シュートを打とうが何本ホームランを打とうが、チームが勝てなきゃゼロと一緒。チームの勝敗だけが評価のすべて。個人の記録を競うスポーツじゃないんです。
個の力が必要以上に誇示されるようになってきた、そんな時代になってきたと思うのは、僕だけですかね。
そんな時代だからこそ、日本やモロッコのようなチームが健闘したことに意義があると思うのですよ。