畑は遠くなりにけり

畑を借りて二月ほどです。農園からもらったテキストとにらめっこしながら、野菜を育ててます。わからないことは農園のアドバイザーに聞いたり、ネットで調べたり……。

大人がテキストを見ないと野菜ひとつ育てられないって、それってどうなんですかね……?

だってしょうがないじゃないか。野菜作りなんて習ったことないんだから。

そう、「野菜作りなんて習ったことがない」んですよ。

小学生の時、ナスやプチトマトを育てたことはあるんですけど、2年生の時にやったっきりなので、もちろんほとんど覚えてません。

そもそも、義務教育で「技術」も「家庭科」も「音楽」も習うのに、「農業」という教科がないなんて、おかしくないですか?

もちろん、音楽を学ぶことも大事です。NO MUSIC NO LIFE。音楽なくして人生なし。

でもそれ言ったら、NO FARM NO LIFEじゃないですか。農業なくして生命なし。

学校の部活でも、演芸部とか農業部とか、あるところにはあるんだろうけど、少なくとも僕が通った学校にはなかったですよ。

ウチの中学はやたらとデカい校庭のほかに、体育館があって、球技コートがあって、武道場まであったんですよ。一個ぐらい潰して畑にしてもかまわないと思うんですけどねぇ。「プロサッカー選手がいない国」よりも、「プロ農家がいない国」の方がヤバいんだから。

それでいて、「日本の食料自給率が低い」ってぼやいてるんですよ。

だってしょうがないじゃないか。学校で農業を教わってないんだから。縁遠い職業が選択肢に入るわけないじゃないか。畑は遠くなりにけり。

畑だけじゃなくて、海もなんだかどんどん都会から遠ざかってる気がします。

浦安の方に行くと、埋め立てられて海岸線が何キロも遠くなってる上に、海岸沿いは工場だディズニーランドだで全然海にたどり着けない。「浦安物語」を読むと、あの時代はもっと海が身近に感じるんだけどなぁ。

民俗学を少しかじって思うのは、都市生活ってめっちゃ「不自然」なことをやってるんじゃないか、ということです。都市のマンションで暮らしたり、独り暮らししたり、電車に乗って通勤通学したり。歴史的にはたかだか数十年ぐらいしかやってない生活スタイルのはずなのに、なんかそれが常識みたいな感じになっちゃってる。

でも、「近所に畑がない」「ふつうに生活してると、土にも植物にも触らない」「仕事場に歩いていけない」、これってよくよく考えると、不自然なことなんですよ。

不自然だからよくない、東京は野原に帰れ! とは言わないけど、不自然なことはやっぱり不自然で、それを常識みたいな顔して生きてるのも、やっぱり不自然なことなんじゃないでしょうかね。