「舟を編む」を見る

久々に連ドラを見てます。

NHK BSで日曜日に放送しているドラマ「舟を編む」

小説を原作とした、出版社の辞書編集部を舞台とする物語です。

前から興味はあったんだけど、小説も映画もなかなか手を出すのはおっくうで。

で、今度連ドラでやるというので、とりあえず初回だけでも見てみようかなと。見続けるかどうかはそれから考えるということで見始めたんですけど、一話目がしっかり面白くて、見続けてます。

辞書作りに没頭する馬締さんの役を、RAD WIMPSの野田洋次郎が演じてるっていうのがいいです。

稀代の作詞家である野田さんが、言葉を探求する辞書編集者を演じるというのは、説得力があります。

RADの時の野田さんはどこかクールな印象があったので、その野田さんがさえないけどキマジメで、言葉と真摯に向き合う辞書編集者を演じてるというのはなかなか面白い。RADの曲を聴いてても、「この歌を歌ってる人が、『舟を編む』の馬締さんを演じてるんだっけ?」と、どうしても頭の中でつながらない。

キャスト的には、かっこいい刑事役のイメージが強い柴田恭兵さんが、紳士的な国語学者を演じているというのも、なかなか面白いです。

キャストだけでなく、ストーリーももちろん面白い。「SHIROBAKO」もそうだけど、僕はこういうモノづくりをテーマにしたお話が好きみたいです。

特に面白いのが、辞書のソフト面である「言葉」だけじゃなくて、ハード面である「紙」へのこだわりも描かれているところ。他社よりも軽い辞書にしたいと考える馬締さん。だけどそのオーダーを受けて製紙会社の人が持ってきたサンプルをチェックした馬締さんは首を横に振る。

「ぬめり感がなくなっています」

以前のサンプルにはあった「ページをめくるときに手に吸い付いてめくりやすくなる感覚」が新しいサンプルにはないのだそうで。おまけに、紙を軽くするということはつまり薄くするということで、そのぶん強度が弱くなることでもあるのです。

本当に、モノづくりを始めると、ソフトだけでなく、ハードの部分にもこだわり始めます。沼です。

ここで言う「沼」とは辞書的に言えば「俗用」というやつで、「一度はまると奥が深くて抜け出せなくなる状態」というやつですね。

でも、僕はこの言葉はあんまり好きじゃなくて。

だって、沼にはまったらもう死ぬしかないじゃないですか。ヤダよ、そんなの。

「沼にハマる」よりも「森に迷い込む」の方が僕はしっくりきます。森なら生きていけるし、沼よりも視界は開けてるし。

イヤぁ、言葉って面白い。

そして、言葉を詰め込んだ辞書作りを描く「舟を編む」も面白い。

ただ、ひとつ心配事があって。

今回のドラマ、原作にかなり変更を入れているらしいんですよ。

ドラマと原作の関係が何かと言われている昨今、原作にだいぶ手を加えているみたいだけど、大丈夫なのかな。

と思ったけど、番組のホームページで原作者・三浦しをんさんのコメントがあって、「脚本を笑いながら読ませていただきました」と書いてあったので、大丈夫なのかな。

まあ、『舟を編む』は2011年の作品で、これまで映画化されたりアニメ化されたりしている小説ですから、それをいま改めてドラマ化するとなると、「原作とは少し違う形で」というのがベストなのかもしれません。

投稿者: ノック

民俗学ZINE作家。 「バズらないモノづくり」をテーマとする「ノンバズル企画」を主宰。民俗学専門ZINE「民俗学は好きですか?」を企画・執筆・製本・販売しています。「民俗学とは『生きること』を探求する学問」をテーマに、民俗学の魅力をわかりやすく、面白く、奥深く紹介していきます。