先日、とあるイベントに出店した時のお話。
その日は10時間っていう長丁場だったんですよ。
会場は吉祥寺のパルコの地下一階。お客さんも文学フリマの時とは少し違う客層。あまり民俗学に興味なさそう。
つまり、アウェーなんです。
とはいえ、このイベントに参加するのは3回目なのでアウェーなのは百も承知だし、アウェーだけどそれなりに売れることもわかってるんです。
それでもやっぱり苦戦しました。さっぱり売れない、売れても1,2冊、そんな時間が後半は続きました。
今日はダメだなぁ、まあいい、アウェーでも学ぶことはあるさ、と半ばあきらめていた最後の1時間。そう、10時間の最後の1時間。いきなりこんなお客さんが現れたんです。
「ここに置いてあるのぜんぶ買うといくらになりますか?」
全部!?
その時は「民俗学は好きですか?」シリーズのうち、vol.5を除いた8種類がブースに並んでたんです。
「3200円です……」と答える僕。
「じゃあ、ぜんぶお願いします」
とお客さん。
ホントに全部っすか!? 今言ったとおり、3000円しますよ!?
MJじゃん! マイケル・ジャクソンの買い方じゃん!
3000円もあったら、ここからだったら特急で長野まで行けるよ?
3000円もあったら、ちょっとした飲み会に出席できるよ?
3000円もあったら、上手くやりくりすれば映画2本ぐらい見れるよ?
その貴重な3000円を私のために使うというのか?
こうして、最後の最後にして在庫は一気にはけたんです。
そして、思うんですよ。
僕が目指すべきものはこういうことなんじゃないか、と。
「より多くの人に」とか「ひとりでも多くの人に」みたいな作り方・売り方じゃなくて、「ひとりの人に深く突き刺さるものを作って、売る」なんじゃないかって。
「民俗学エンタメZINE」なんて銘打ってる時点で、興味ある人しか買ってくれないわけですよ。いきなり間口を狭めているわけですよ。マニアックなわけですよ。だったら、「より多くの人に」じゃなくて「たった一人に突き刺さる」を目指すべきでしょう。
今の世の中、やれ「フォロワー数何万人」とか、「チャンネル登録者数何万人」とか、人数の多さばかり取りざたされて、この「たった一人突き刺さるものが作れたか」は評価されにくいんじゃないでしょうか。
たしかに、「1万人の人が見たくなる動画」を作るのは大変です。
でも、「誰か1人が1万回見たくなる動画」を作るのはもっと大変。
さらに言えば、家族や友達など好みをよく知ってる特定の人に向けたものではなく、「見ず知らずの誰か1人が1万回見たくなる動画」なんて、もっと大変!
だけど数字の上ではどっちも同じ「1万回再生」です。
さらに言えば、「なんとなく見た人が1万人いたよ再生」とか、「熱心に見た人が100人いたよ再生」とか、見た人がどれだけの熱の入れようかを測る術はないわけで。
何でもかんでも数字で表せる時代だからこそ、数字では表せない価値ってものにもっと注目してモノづくりをしていきたいと思う今日この頃です。
「バズらない、深く突き刺され」をこれからのテーマにやっていこうかしら。
ちなみに、そのイベントは「吉祥寺ZINEフェスティバル」というのですが、明日もあってまた出店します。