旅は、楽しいだけではない。ピースボートに乗った経験者ならば、外国でトラブルに見舞われたことが一度はあるはずだ。日本ではなんてことのないトラブルも、言葉の通じない国では命取り。今回は、ピースボートの度で僕が出くわしたトラブルを、焦りや恐怖を感じた順に3つ紹介しよう。ノック自由堂のシャレにならない話、始まり始まり。
ピースボートの船旅 外国でガチで焦った第3位 トルコの爆走タクシー
外国のタクシーは、結構スピードを飛ばす。ドバイで乗った時も制限速度が80㎞の道をほんの100mほど走るだけなのに、トップスピードまで加速する。ペルーでタクシーに乗った時も、高速道路をサーキットか何かのようにぶっとばしていた。
どうやら、日本が距離でメーターが変わるのに対し、時間でメーターが変わる国があるらしい。こういった国のタクシーではなるべく早く着かないと、「料金あげるために、わざとのろのろ走っただろ!」というトラブルになりかねないのだそうだ。
そんなタクシーで一番恐怖を覚えた国、それがトルコだ。
ピースボート88回クルーズは、トルコのクシャダスに寄港した。野良猫がのんきに暮らす港町だ。
このクシャダスの目玉は、隣町にあるエフェソス遺跡だ。僕らが訪れた2015年に世界遺産になったばっかりである。古代ギリシャの時代に栄華を誇った大都市だ。今でも巨大なアリーナををはじめ、当時の栄華を伝えている。

この遺跡はクシャダスから離れているため、行き来にはタクシーを使う。
このタクシーが、とんでもないスピードで飛ばすのだ。
いろは坂のような曲がりうねった山道を、猛スピードで飛ばしていく。カーブに差し掛かっても、減速した様子がまるでない。10回以上、「このままガードレールの向こうに突っ込むのかな」と覚悟した。
だが、助手席に乗っていたピースボートの水先案内人の四角大輔さんは平然としている。大輔さんはニュージーランド在住だ。
「外国のタクシーって、これが当たり前なの!?」と驚愕したことを覚えている。
外国に限らず、日本でも深夜のタクシーはかなり飛ばす。「急いでないから、普通に走ってくれー」といつも思う。
ピースボートの船旅 外国でガチで焦った第2位 フランスの山の中で迷子
ピースボートの船には「帰船リミット」というのがる。要は門限だ。これに遅れると大変なことになる。
船は港に停泊する際、港にお金を支払う。それが伸びれば莫大な延滞料金を支払わされる。デパートの駐車場で時間に遅れると追加料金を取られるのと同じ理屈だ。
だから、帰船リミットに遅れると、しこたま怒られるらしい。
リミットに遅れても、少しは待ってくれる。その代わり、しこたま怒られる。
そして、最悪の場合、置いていかれる。
だから、常に僕は帰船リミットに余裕を持って船に戻っていた。早めに船に戻って、人の少ない船を楽しんだり、デッキに出て港で景色を楽しんだり、早く帰っても結構楽しめる。
事件が起こったのはフランス、マルセイユだ。
マルセイユは港から離れていて、歩いて30分かかる。これまで訪れた国で、タクシーで散々な目にあってきた僕は、歩いて市街地に向かった。
帰船リミットは16:30。余裕を持って13:30には市街地を出た。
行きと同じ海沿いの道ではつまらないので、帰りは違う道を歩いて行った。
いい加減おかしい、と思ったのが14:00ころ。いつまでたっても海に着かない。
海に着かないどころか、むしろ山を登っている。
山といっても周囲は住宅街なのだが。
そう言えば、港から山が見えていた。そのどれかに上ってしまったのかもしれない。
とりあえず、現在地を把握しなければ。
しかし、バス停に書いてある地図はあろうことかフランス語で書かれていて(当たり前)、現在地がわからない。
何とか現在地を把握できたのは、14:30になってからだった。
なんと、僕は港から見えていた山を越えて、もう一つ向こうの山に登っていたのだ!
あと2時間以内に山を下り、登り、また下らないと、船に乗り遅れてしまう!
しかも、港はいくつかあって、帰るべき港の名前がわからない!
幸い、方位磁石は持っていた。そして、西に向かえばいずれは海岸線に出れることもわかっていた。
西へ向かってフランスパンを片手に急ぐ。
頭の中にはもちろん「最悪のシナリオ」だ。
幸い、クレジットカードは持っている。次の寄港地のバルセロナも陸続きだ。
だが、言葉が通じずに現在地すらわからなかった人間が、どうやってバルセロナにたどり着けというのだ!
見覚えのある海岸線の道に出れたのが15:30。真っ直ぐ西に向かっていたはずだが、いつのまにか市街地の近くまで戻っていたようだ。
船にたどり着いたのは、16:00だった。もし、「余裕を持って船に帰ろう」と思わなかったら、とんでもないことになっていた。
それ以来、「必ず港の名前を覚える」と「必ず方位磁針を持ち歩く」ようになった。方位磁針は、日本に帰った今でも、見知らぬ街に行く際は持ち歩いている。
ピースボートの船旅 外国でガチにあせったランキング 第1位 インドでパスポートと財布を喪失!

インドのムンバイで僕は仲間と一緒にタクシーに乗った。行先はムンバイのスターバックスコーヒー。
インドのタクシーのおっちゃんは目の前を歩行者が横切っても、「そんなの轢かれる方が悪いに決まってんじゃん」と言いたげにアクセルを緩めない。おまけに、車間距離ぎりぎりまでトップスピードで近づく。助手席に乗っていた僕はめちゃくちゃ怖かった。
さて、タクシーを降り、スターバックスに入った僕ら。注文をしようとした瞬間、最悪の事実に気が付いた。
肩にかけていたはずの財布とパスポートを入れたカバンがない!
思い返すと、タクシーに乗るとき、カバンを肩から外して助手席の足元に置いた。
そして、そのまま出てきた。カバンをすっかり忘れて。
あわててスターバックスの外に飛び出したが、タクシーはすぐに立ち去った後。
まずい、まずいぞ! タクシー会社に電話しなければ。いや、タクシー会社なんて覚えていないし、そもそも、言葉が通じない。探すのはタクシー会社じゃなくて、日本大使館か(ムンバイには総領事館がある)。
などと2,3分途方に暮れていたら、誰かが肩を叩く。
振り向くと、さっきのタクシーのおっちゃんが、僕の黒いカバンを持ってたっていた!
どうやら、途中でカバンの存在に気づき、引き返してくれたらしい。
おっちゃんには悪いと思いつつも、その場で中身を確認する。パスポートも財布も、財布の中身も全く手を付けられていなかった。
運転中は散々こき下ろしたが、こうなったらもはや感謝しかない。
思えば、ピースボートのポスターを貼っていた時もいつもインド人のカレー屋さんに助けられてきた。まさか、本場のインドでこんな風に助けられるとは。
スターバックス前は結構な人ごみだった。向こうもよく僕を見つけられたと思うが、ぼくは迷子にならないように、オレンジのリュクに赤いバンダナといういでたちだった。それが功を奏したのかもしれない。
ぼくは財布から10ドルを出して、おっちゃんに渡そうとした。おっちゃんは手をぶんぶん振って、とても受け取れないという。
しかし、それではとても僕の気持ちがおさまらない。全部なくしたと思っていたのだ。それに比べれば10ドルくらい、安い。
こうして、カバンは無傷で帰ってきた。おっちゃんには本当に感謝しても感謝し入れない。
それ以来、僕はカバンを絶対に体から外さないようになった。本当に大事なものは首にかける。そうすれば、首を落とされない限りなくすことはない。逆に言えば、首を落とされてしまったら、もう諦めるしかない。
最後の寄港地、サモアで無事船に戻ってこれたとき、「これですべての寄港地を無事に終えることができた」と安堵した。外国の旅は刺激が多く楽しいが、言葉も日本の常識も通じない外国では、予期せぬトラブルが降りかかり、トラブルを解決するのも大変だ。「余裕を持って船に帰る」、「港の名前をちゃんと覚える」、「荷物は絶対に離さない」、これが僕が、トラブルで学んだことだ。