日本ほど治安のいい国はそうそうないという。すりや置き引きの警戒をする人もあまりいないし、女の子が夜に一人で出歩いているし、拳銃の規制も完璧だ。しかし、世界はそうはいかない。今回は、ピースボートで訪れた寄港地の危険度について話そう。ピースボートで訪れる街は観光地も多いが、危険な町も多い。
危険度レベル1 東京・南千住

世界の危険度について話す前に、まずは日本の「治安が悪い」とされる町について話そう。
先日、仕事で南千住の木賃宿に泊まる機会があった。夕方ごろに街を訪れ、宿を求めてふらふらと歩く。
ホームレスが堂々と道端で寝て、公園にはホームレス村ができている。なるほど、日本国内では確かに異質な光景なのかもしれない。
だが、不思議と「怖さ」を感じない。
世界の危険度はこんなんじゃない。
ホームレスに因縁をつけられることもなかったし、銃を突きつけられる可能性なんて皆無だろう。
だが、世界の危険度なんてこんなもんではなかったのだ。
危険度レベル2 ヨーロッパ

ピースボートの地球一周の旅の中でも、やはりヨーロッパは治安がよく、旅をしやすかった。一人でふらふらと町を回れる。
ピースボートからもらった資料にもせいぜい「すりや置き引きに気を付けて」とか「人気のない通りに気を付けて」とあるが、この程度の注意書きは世界各国共通だ。
経済破たんしたばかりのギリシャも、別に治安の悪さは感じなかった。むしろ陽気な町だった。
シチリア島に行ったときはマフィアにカツアゲされるんじゃないかなんて冗談を言い合っていたが、もちろん、マフィアはそんなせこいことはしない。ネットで調べても「マフィアはカタギの観光客には手を出しません(笑)」と書いてあった。
とまあ、治安が良くて旅のしやすいヨーロッパだったが、僕が訪れた直後、パリでテロ事件があり、その後、ヨーロッパの都市部でもテロが頻発するようになってしまった。
危険度レベル3 アジア

アジアで訪れた町の中でトップクラスに治安が良いのはシンガポールとドバイだろう。どちらも、都市としての美しさを保っている。
最近のニュースで、ドバイ警察は「空飛ぶポリス」の導入を検討している、なんて言うのをやっていた。110番すれば巨大ドローンみたいなのに乗って空から警察官が助けに来てくれるのだとか。何とも頼もしい限りだ。
少しディープなところだとセブ島、ムンバイ、ドーハ、と言ったあたりだろうか。セブ島やムンバイにはスラム街があり、野良犬がうろついていたりと見た目あまり治安が良くなさそうではあるが、きちんと警戒していればそこまで恐れなくていいと思う。
ドバイとセブ島に至っては、夜も出歩けた。
東南アジアのもっとディープな場所だとまた勝手が違うのだろうが、大都市や観光地は比較的まわりやすい。
ムンバイで警戒しなければいけないのはむしろ縦横無尽に走る車の方だろう。「ひかれる方が悪いに決まってんじゃん」とでも言いたげに、歩行者をよけるそぶりなど全くない。
ただ、インドは性犯罪の発生も多い。警戒を怠らないことが大切だ。
また、イスラム圏はどうしても「イスラム国」と言って危険な集団がついて回る。外務省の渡航情報をよく確認しておくことが大切だ。
危険度レベル4 中南米

ピースボートから事前に寄港地をまとめた冊子が渡される。そこには各寄港地の治安に関してのコメントも載っているのだが、中南米に入ると「一人歩きはやめてください」「自由行動は控えてください」「貴重品は持ち歩かないで」と急に物騒な言葉が並ぶ。
中南米の中でもメキシコは比較的治安がいい。夜に出歩いても得に危険は感じなかった。
とはいえ、襲われないように男4人で固まっていたのだが。「いくら何でも成人男性4人組を襲うやつはおらんやろ」と考えて。
だが、隣の国、ベリーズは治安が悪い。
どれくらい治安が悪いのかというと、「ツーリストビレッジ」という、観光客向けの土産物が並ぶ一角があるのだが、ピースボートから言われたことは「そこから出るな。命の保証はできない」。
ツーリストビレッジの外に出るには、ピースボートのオプショナルツアーに参加しなければいけない。自由行動は禁止だ。
理由はただ一つ。「命の保証ができない」。
いったいどのくらい物騒な場所だというのか。
パナマのクリストバルも同じように、「港から出たら命の保証はできない」と言われていた。
僕はツアーに参加していたので、大型バスに乗って港を出て、1時間ほど離れた「クナ族」という部族のコミュニティを訪問したのだが、
その帰り道の話。すっかり日も暮れて、バスはクリストバルに帰ってきた。
バスの窓から路地を除いたときのあの何とも言えない「底知れぬ闇」の不気味さと言ったら。具体的に何か見えたわけではないが、確かに生きて帰れないような雰囲気を湛えていた。
ペルーのカヤオも同じような場所だった。首都・リマの隣町で大きな港があるのだが、どこか殺伐とした雰囲気だ。
首都・リマはおしゃれな店が並び、どことなく東京を彷彿とさせる。地球の裏側で東京みたいな町に出会えるとは。
だが、路地はどこか「底知れぬ闇」があるようで、怖くて大通りしか歩けなかった。
そんなリマを丸一日かけて回って、カヤオの港へと帰ってきたのが夜の11時ごろ。そこで、驚愕の事実を知る。
船に戻るバスがない。
僕も、一緒に回った子も、「船に戻るバスは24時間営業」と勝手に思い込んでいたのだが、コンビニじゃあるまいしそんなわけない。バスに終了時刻があることをすっかり見落とし、帰ってきたときにはもうバスは終わっていたのだ。
「勝手に出歩くな」と言われたカヤオに取り残されてしまった。宿を探すにしても、うっかり危険な路地に踏み込んでしまったら……。
なんて途方に暮れていると、男が一人話しかけてきた。
いったい何者だ! と警戒していたが、なんと彼はピースボートの船のクルー。
なんと、クルー用のバスが残っていて、それに乗せてもらえることになったのだ。
そんなこんなで無事に船に帰ってくることができた。結論、門限はよく確認しよう。
「危ないところ行ったけど、無事に帰ってきたぜ」という武勇伝は、世界を旅したものなら一ネタぐらい持っていると思う。
一方で、「南米で日本人観光客が射殺された」なんて痛ましいニュースも聞く。そういったニュースを聞くたびに、本当によく生きて帰ってこれたなと背筋が寒くなる。
僕の場合、十分に警戒していた。だが、「うっかりミス」で危うく治安の悪い街に取り残されてしまうところだったのだ。
ピースボートで聞いた怖い話
ピースボートに乗っている時、とあるおじさんから「過去にピースボートの乗客でこんな人がいた」という話を教えてもらった。
その乗客は空手の有段者で、もし寄港地でからまれても、相手をボコボコにしてやろうと意気込んでいたらしい。
そして、実際に彼はチンピラにからまれた。彼は空手で鍛えた実力を遺憾なく発揮し、相手をボコボコにしてやった。
ところが、ボコボコにされたチンピラは仲間を大勢引き連れて戻ってきたという。いくら空手の達人でも多勢に無勢。彼はボコボコにされてしまったという。
その話をしてくれたおじさんはこう締めくくった。「どんなにケンカに自信があっても、土地勘や仲間がいる分、現地のチンピラの方が優位なのだから、勝とうとしてはいけない」と。
ピースボートに乗ると警戒心が強くなる
日本にいるとまず警戒しながら街を歩くことはないだろう。
だが、ピースボートに乗っている間、街を歩くときは常に財布をガードする形をとっていた。
今でも、日本の人ごみなどを歩いていると、ついつい財布をガードする。
以下、「寄港地でトラブルに巻き込まれない方法」をいくつか書く。
・財布をガードする
これは基本中の基本だ。英語のあいさつができなくても財布を守れるようにしよう。知らない間に財布をすられてた、なんてことがないように。
・人にむやみにカメラを向けない
これも、どの寄港地でも上陸する前に言われることだ。特に、スラム街なんかは観光気分で写真を取られたら怒る人もいるだろう。
・荷物は絶対に体から離さない
タクシーの中とか、喫茶店とか、ついついリラックスをして荷物をわきに置く、なんてこともあるかもしれない。
そのまま荷物を忘れて車や店を出てしまったら大変だ。
日本だったらタクシー会社やお店に連絡する、という手段もあるだろう。
だが、外国ではそもそもタクシー会社がどこかわからない。お店は動かないが、迷わず戻れる保証もない。
荷物は絶対に体から離さないこと!
財布とパスポートの入ったカバンをタクシーに置き忘れた本人が言っているのだから間違いない!(タクシーの運転手のご厚意で、奇跡的にカバンが帰ってきました)
・タクシーは常に進行方向を確認する
僕は常に方位磁針を持ち歩いていた。そして、タクシーに乗るときは常に進行方向の方角を確認していた。
これは、事前に「インドでタクシーに乗った日本人女性の観光客がそのまま拉致されて乱暴された」というニュースを聞いていたからである。別の方角に車が動き出していたら要注意だ。
ちなみに、インドでもタクシーに乗った時、最大限の警戒をしていたのだが、僕の置き忘れたカバンを届けてくれたのはタクシー運転手のおじさんだった。車に乗っている間中、彼を疑っていたことを心の底から謝罪した。
だが、すべてのタクシー運転手が彼のような善人ではない。「方角チェック」はやって損はない。やったうえで何事もなければ「おじさん、疑ってごめんよ!」と心の中で謝ればいいが、やらずに何か事件に巻き込まれたら一大事だ。
自分一人の時ならまだしも、特に、未成年を引き連れていて自分が最年長の時とか、女性だけで行動するときとか、女性と二人っきりの時とかは最大限に警戒するべきだ。
・大事なものは首から下げる
パスポートとかカメラとかキャッシュカードとか、特に大事なものは首から下げる。僕の友人をはそれを怠ったがためにカメラをなくしてしまった。
首から下げておけば、首をなくさない限り大丈夫だ。逆に、首をなくしてしまったら、もうカメラとかパスポートとかどうでもいい。
・言いつけは守る
「ここから先は言ってはいけない」とか、「この時間までに帰ってこい」とか、ピースボート側の言いつけはしっかりと守ること。
うっかり門限を見逃して、危険な町に取り残されると、本気で死を覚悟して冷や汗しか出てこないぞ。
「トラブルに巻き込まれたけどなんとかなった」「危険な目にあったけど帰ってこれた」、こういった武勇伝もまた旅の魅力なのかもしれない。
だが、「何事もなく無事に旅を終えた」、これ以上の武勇伝は存在しない。