「旅は移動しないといけない」って、誰が決めつけた?

ZINE作りをしていると、自分が旅をしているような感覚に陥ることがあります。

まったく何もないところから、計画を立て、準備を進め、「感性」という目的地にたどり着くように、一歩一歩製作を進める。なんだか旅に似ているような気がしますね。

計画通りに行かないこともしょっちゅう。計画変更もあります。その辺も旅に似てる。

一冊作るのにかかる日数は約100日。ちょうど、船で地球を一周するくらいの時間で、ZINEが一冊出来上がるんですね。

出来上がったZINEを見て、ノートにつらつらと構想を書いただけの状態から、よくぞ形になったと感慨にふける様は、まさに旅路を振り返る感動そのもの。

ZINE作りは、いや、モノ作りは、旅に似ているんです。

何より、旅もZINE作りも楽しいしね。

コロナ禍でさっぱり旅行に行ってないので、「旅行に行きたいよー」という欲はあるんだけど、ここしばらく、「どこかにあてのない旅に行きたいよー」という欲はさっぱりありません。それはきっと、モノ作りが旅と同じような刺激と興奮、そして感動を与えてくれてるからでしょう。

むしろ、「移動しなければ、旅とは呼べない」だなんて、誰が決めつけた?

物理的な移動を伴っていなくても、見ている景色が変わり続けるのなら、もうそれは「旅」と呼んでいいんじゃないか?

旅好きの人の多くは、「旅に出ると、価値観が変わるよ」なんて言います。確かに、僕は地球一周の船旅二日目ぐらいで、それまでの狭い価値観がぶっ壊れました。

旅が価値観が変えるというなら、「旅とは、物理的な移動を伴わなければいけない」という、凝り固まった価値観も、ぶっ壊れるべきです。

たとえ家から一歩も出なくても、目の前の景色が変わり続け、ワクワクし続けているのなら、それは「旅」と呼んでいい!

むしろ、「旅」を体験するのに、長距離移動を伴わなければならない、と考えていることの方が、非効率だろ。電車代だってバカにならないし、電車に座ってるだけでも、疲れるんだぞ。

ちなみに、僕のZINE作りという旅は、ちょっとは移動も伴うんですよ。

作ったZINEを売らなければいけないんで、ZINEを取り扱うお店やイベントは常に探してます。

また、イベントのブースを作るために、ホームセンターや文房具屋、時には都会の専門店や河童橋の道具街に足を運ぶことも。

ZINEを作ってなかったら、絶対行かなかったお店、絶対知らなかったイベント、絶対買わなかったもの、そういった未知の世界にZINE作りが結び付けてくれる。

そして、絶対出会わなかった人、絶対読まなかった本、絶対知らなかったこと、そういった結びつきもあります。

そういったものが、目の前の景色をどんどん変えてくれる。

ZINE作りは旅です。卓上でできる、極上の冒険なのです。

投稿者: ノック

民俗学ZINE作家。 「バズらないモノづくり」をテーマとする「ノンバズル企画」を主宰。民俗学専門ZINE「民俗学は好きですか?」を企画・執筆・製本・販売しています。「民俗学とは『生きること』を探求する学問」をテーマに、民俗学の魅力をわかりやすく、面白く、奥深く紹介していきます。