アニメ「ヴィンランド・サガ」について語りたい!

久々に熱く語りたいアニメに出会いました。

それが「ヴィンランド・サガ」

1と2で半年ずつ、1年間続けて見ました。これはヘタしたら人生観が変わるアニメです。

「ヴィンランド・サガ」がどんなアニメかというと、

舞台は千年前のイングランド周辺。「海の向こうにはヴィンランドという名の手つかずの大地が広がっている」という伝説があって、そこを目指す主人公トルフィンを描く物語なんだけど、

これが全然ヴィンランドに行かないの。

1クール目 トルフィン、バイキングの少年兵として戦場に立ち、秒速で闇堕ちする。ヴィンランドに行く気配まったくなし。

2クール目 トルフィンより、トルフィンが父の敵と狙う海賊アシェラッドに重点が置かれ、トルフィンは殺気と憎悪をにまみれた10代を送る。ヴィンランドのことなんてすっかり忘れている。

3クール目 アシェラッドへの復讐に失敗し、奴隷に身を堕としたトルフィン。殺気も生気もすっかりなくなって無気力な状態に……。

いつヴィンランドに行くんだよ。

奴隷に身を堕としたトルフィンだけど、森を切り開き麦を育て、奴隷仲間で初めての友達ができて、戦場にいた頃に比べればまっとうな生活を送ることで、まっとうな人としての感覚を取り戻していきます。

そうして感じはじめるのが、これまでの戦場での行為に対する「罪の意識」。夢の中で自分が殺してきた人たちがわらわらと現れ、トルフィンは「すまない……」っていうんだけど、命を奪ったことに対する「すまない」じゃないんですよ。

殺し過ぎて「あなたたちがどこの誰なのか思い出すことすらできない」ってことに対する「すまない」なんですよ。

そこから自分の犯した罪を背負って生きると決めたトルフィンは、「もう二度と暴力を振るわない」と誓い、「この世界から戦争と奴隷をなくすことはできないか」と考えるようになるんです。

でも、どこに行っても海賊が襲ってきて、戦争になる……。

そこで思い出すのが、幼き日に聞いたヴィンランドの伝説。海の向こうには海賊たちも知らない大地が広がっている……。

そうだ、ヴィンランドに行こう! そこに戦争も奴隷もない国を作るんだ!

ここまで第1話から9か月! 長かった!

昨今の「イントロをとばして聞く」とか、「映画をコマ送りで見る」みたいなせっかちな人たちを容赦なくふるい落とすアニメです。タイパなんて言葉、北海に沈めました。

こうして迎えた4クール目だけど、「二度と暴力は振るわない」と誓ったトルフィンの身に、次々と「戦わなければ生き残れない!」という試練が訪れます。まるでその信念を試すかのように。何せこの時代は「強い奴が殺して奪うのが当たり前」という世の中なのです。

それでも、「暴力は最後の手段。それに代わる最初の手段を見つける人になりたい」「戦わない。逃げる」という信念を貫こうとするトルフィン。その信念を貫き、いよいよヴィンランドへ向かう!

ここでアニメは終わります。続きはマンガでお楽しみください。僕も原作読みたい!

「ヴィンランド・サガ」には大きく二つの魅力があります。

一つが、トルフィンの考え方の変化を楽しむということ。殺気立った10代から、無気力な奴隷、罪への後悔を経て自分の使命を見出すまで、トルフィンという人間はその人生の中で少しずつ価値観を積み上げていくのです。彼の心情の変化を読み解き一人の人間の人生を追体験する楽しみがあるんです。

そしてもう一つが、「戦わない、逃げる」という生き様を定めてからの、過酷な時代の中でその生きざまを貫こうとする魅力。困難を前に兵士だったころの殺気を放ちながら「暴力は絶対に振るわない」という覚悟を決めているのがかっこいいんですよ。

偉大な何かを成し遂げる英雄というよりも、混沌とした時代の中でおのれの生きざまを貫こうとする男の生涯を描いたアニメ、それが「ヴィンランド・サガ」なのだと思います。

投稿者: ノック

民俗学ZINE作家。 「バズらないモノづくり」をテーマとする「ノンバズル企画」を主宰。民俗学専門ZINE「民俗学は好きですか?」を企画・執筆・製本・販売しています。「民俗学とは『生きること』を探求する学問」をテーマに、民俗学の魅力をわかりやすく、面白く、奥深く紹介していきます。