アニメのタイトルは内容がわからないくらいがいい

7月に入って、また新しいアニメが始まった。

たぶん、この「新しいアニメのチェックの仕方」だけでもアニメオタクごとにいろんなやり方がある。

世の中には、1話目だけは片っ端から見る、という殊勝なオタクもいるそうだ。

僕はと言うと、前情報を一切入れない。全くの先入観なしで見たいからだ。

新しいクールが始まったら、テレビの番組表機能を使って、TOKYO-MXの「その日の新番組」を、タイトルだけチェックする。タイトルだけだから、どんな絵だとか、どんな設定のお話だとか、どんな声優さんが出てるとか、どんな前評判だとか、そういうのは一切見ない。

そして、タイトルで乗り気になれないアニメは、もう見ない。

ここが僕のこだわりである。「タイトルにその作品のすべてが凝縮されている」

だから、タイトルにセンスを感じないアニメは、見ない。

そんな僕が思うベスト・オブ・タイトルは、アニメではなく、太宰治の小説「人間失格」だ。

わずか漢字四文字。いたって簡潔。すっきりしている。

文字数が少ないだけでなく、語感もいい。

それでいてインパクト抜群。

そして、このたった四文字のタイトルは、小説の内容を的確に表している。

ところが、なぜ「人間失格」なのかは、最後まで読まないとわからない。

短く簡潔、語感がいい、インパクトがある、内容にあっている、でも最後まで読まないとわからない。この5つを抑えたベストタイトルである。

さて、アニメだとベストタイトルはどれだろう、とあれこれ考えてみた。

アニメだと一番好きなタイトルは、「プリンセス・プリンシパル」だ。もちろん、作品としても大好きだ。

「人間失格」に比べると、長いタイトルだ。11文字もある。

だけど、それを感じさせないほど語感がいい。プリンプリンと韻を踏んでいるので言いやすい。

そして、アニメの内容にちゃんと合っている。このアニメは「王女」、つまりプリンセスが主要キャラクターなのだ。

そして、アニメの雰囲気にもあっているのだ。19世紀ぐらいのロンドンが舞台で、「プリンシパル」という単語と妙に合う。

そう、この「雰囲気にあってる」というのが結構大事だ。

タイトルを見ただけじゃ、どんなアニメなのかわからない。でも、なんとなく雰囲気は伝わる。

アニメの雰囲気に合っていると、内容を知った後でも「やっぱりいいタイトルだな」と思える。

そういう意味では、「ドロヘドロ」もなかなか好きなタイトルだ。

漫画原作のアニメなんだけど、タイトルだけじゃ、どんなアニメなのか、タイトルがどんな意味なのかわからない。

そして、アニメを見たあとでも、やっぱりタイトルの意味が分からない(笑)。泥もヘドロも出てこないんよ。

ただ、アニメの雰囲気にはメチャクチャマッチしたタイトルなんよ。「ドロヘドロ」なんよ、あのアニメ。意味わかんないけど。

毎回のように開始直後にテロップで「残酷な描写があることをご了承下さい」と出るのだけれど、直後に主人公がタクシー代を踏み倒すために運転手を殺害するシーンがあって、「主人公が残酷なんかい!」とテレビの前でツッコミを入れた。残酷なシーンと言っても、普通、敵がやることでしょ。

開始0秒で主要キャラの腕が血しぶきと共に切り取られ、数秒してから「残酷な描写が」とテロップが出たこともある。テロップがあと3秒遅かった。

シュールだけど面白いアニメなのでぜひ見てほしい、と思うのだけれど、今の説明で見たいと思う人はいるのだろうか。タイトルだけでなく、説明にもセンスが必要である。

そんなドロヘドロを描いた林田先生の最新作のタイトルは「大ダーク」である。小学生がつけそうなウソみたいなタイトルが逆に面白い。

投稿者: ノック

民俗学ZINE作家。 「バズらないモノづくり」をテーマとする「ノンバズル企画」を主宰。民俗学専門ZINE「民俗学は好きですか?」を企画・執筆・製本・販売しています。「民俗学とは『生きること』を探求する学問」をテーマに、民俗学の魅力をわかりやすく、面白く、奥深く紹介していきます。