海賊警戒水域に行った僕が映画「キャプテン・フィリップス」を見た!

海賊に襲われた船長の実話をもとにした「キャプテン・フィリップス」という映画を見た。以前、僕は「ピースボートの海賊水域で自衛隊護衛の矛盾を参加者がツッコんでみた」という記事で、「どうやってぼろ船が客船を攻略するのか教えてほしい」と書いた。今回はこの映画を見ながら、どうやって海賊が客船を攻略するかを考えてみよう。


貨物船と海賊の戦いを描いた実録映画「キャプテン・フィリップス」

「キャプテン・フィリップス」が公開されたのは、2013年。主演は「ダ・ヴィンチ・コード」のロバート・ラングドン役などで知られるトム・ハンクスだ。

あらすじ

リチャード・フィリップスは貨物船「マークス・アラバマ号」に乗って、ソマリア沖を航海していた。そこは「アフリカの角」と呼ばれる海賊多発地域。マークス・アラバマ号は海賊たちが乗るボートに付け狙われてしまう。

1度は追跡を振り切ったマークス・アラバマ号だったが、海賊たちは翌日も現れる。リチャードたちはホースによる放水などを試みるも、4人の武装した海賊たちは船に接近し、とうとう乗り込んでしまう。果たして、リチャードと船員たちの運命はいかに?

コンテナ船、海賊船、小型ボート、救命ボート、軍艦と、船好きにはたまらない船のオンパレードだ。

ストーリー自体も緊迫感がありとても面白い。また、海賊側も単なる悪者ではなく、貧しいソマリアで暮らす彼らの事情が描かれている。特に、アメリカ海軍が解決に乗り出してからの彼らの追い詰められっぷりにも緊迫したものがあった。

また、トム・ハンクスが名優と謳われるのも納得の演技を見せる。終盤、いよいよ命の危機に瀕して「家族に合わせてくれ!」と叫ぶシーンは鳥肌もので、とても演技を見ているものとは思えない。

一方で、モデルとなったリチャード・フィリップ氏本人が「自分はこんなヒーローではない」と評しているように、あくまでも実話をもとに虚飾織り交ぜた映画であることを忘れたはならない。実際はもっとひどかったらしい。

とはいえ、ここで描かれた内容が海賊対策の参考になるのは間違いないであろう。

海賊警戒水域とは?

世界の海における海賊警戒水域は、実は意外と広い。ピースボート88回クルーズでは、インドのムンバイからスエズ運河に至るまでの約2週間が海賊警戒水域だった。ここにいる間は、夜間は外に一切明かりが漏れないようにする。

このうち、日本の海上自衛隊が護衛してくれるのは、ソマリア沖のアデン湾水域というところだ。距離にして1100㎞。護衛艦がついてくれるのは2日間。意外と短い。

ソマリア沖・アデン湾における海賊対処 防衛省・統合幕僚監部

ところが、この事件が起きたのはソマリア南東沖。自衛隊の護衛のない海域なのだ。

マークス・アラバマ号が最初に海賊と遭遇したのは「北緯2度2分・東経49度19分」の地点。アデン湾水域などとっくに通過し、ソマリア半島を回ってソマリア沿岸からそろそろ抜けようという場所だ。

つまり、よく「ピースボートは海賊が怖くて自衛隊に泣きついた」などという話を聞くが、

自衛隊がいない海域も十分危険であり、ピースボートはそんな海域を護衛なしで航海している。

では、実際に映画の内容から、海賊にピースボートの「オーシャンドリーム号」を占拠できるのか、検証してみよう。

検証① 海賊に襲われるまで

この映画は、船オタクとしても興味深いものだった。舞台が貨物船だからだ。オーシャンドリーム号から世界のいろんな貨物船を見て、一度は乗ってみたいものだと思っていた。

なぜなら、客船と貨物船は、構造が全然違うのだ。

ピースボートのオーシャン・ドリーム号がこちら。

以下にも船といったフォルムである。

一方、実際のマークス・アラバマ号がこちら。

この写真の船からコンテナを消すと、相当平べったい船だということがわかるはずだ。船を操作するところを「ブリッジ」と呼ぶのだが、オーシャンドリーム号のブリッジは船の前方にある。一方、マークス・アラバマ号のような貨物船のブリッジは後方についているのが一般的だ。船の後方に、ブリッジのある白い建物があり、前方の約9割はコンテナを乗せる広大なスペースとなっている。

それは、船の甲板から海面までの距離が、オーシャンドリーム号よりもマークス・アラバマ号の方が圧倒的に短いことを意味している。映画の中でリチャードが甲板を歩くシーンがあるが、それを見た僕の感想が「海が近い」だった。オーシャンドリーム号は8階の甲板から海を見ることが多く、海面ははるか後方に見える。一方、マークス・アラバマ号は、建物の2~3階から地面を眺めるような感覚で海が見えているのである。

さて、最初に海賊船に狙われた際、マークス・アラバマ号は次のような行動をとった。

レーダーで確認⇒目視で確認⇒スピードアップ⇒海軍に通報

おそらく、オーシャンドリーム号も海賊に遭遇したら同じような行動をとるだろう。もっとも、「スピードアップ」したマークス・アラバマ号の速度は17ノットである。これは、普段のオーシャンドリーム号の速度とそんなに変わらない。

一方、映画の中で貨物船の乗組員たちは、「海賊のボートは26ノットも出してた!」と言っている。小型ボートの方がスピードが速いのだ。

その結果、2日目の遭遇でマークス・アラバマ号はとうとう追いつかれてしまう。

検証② 海賊たちはピースボートの船に乗り込めるのか?

翌日、再度現れた海賊たち。銃を撃ってくる海賊に対し、マークス・アラバマ号はホースからの放水で対抗する。

この放水機能がオーシャンドリーム号にあるかどうかは、残念ながら僕は知らない。そんなものを使うような危機に陥らなかったからだ。

しかし、海賊たちは放水にめげず、マークス・アラバマ号の横に船をつける。ああ、海賊侵入の危機……。

この時、僕はあれれと思った。

マークス・アラバマ号が全速力で動いている割には、船の横の波が少ないのだ。

僕の感触では、世界で一番波が穏やかなのが地中海で、一番波が荒いのが日本近海だ。ソマリア沿岸は決して荒くもないが決して穏やかではない。そんな海を航行するとき、オーシャンドリーム号の甲板から海面を見下ろすと、常にひときわ大きな波が上がっていた。

しかし、映画では実際にマークスアラバマ号を走らせているにもかかわらず、ほとんど波が出ていない。船の動いた後に彗星の尾のように現れる「澪」があるので、動いていることは確かなのだ。

もしかして、マークス・アラバマ号って軽い? マークス・アラバマ号の重さがわからないので何とも言えないが、先ほど見せた2隻の写真をよーく見比べてみると、確かにコンテナを積んだ状態でもなお、マークス・アラバマ号の方が小さく見える。

さらに、乗っている人の数も、オーシャンドリーム号が1000人近いのに対し、マークス・アラバマ号は20人。体重の平均が60㎏ぐらいだとすると、この時点で120トン軽いわけだ。

もしかしたら、マークス・アラバマ号はオーシャンドリーム号よりずっと軽かったのかもしれない。

だとしたら、重い方のオーシャンドリーム号の横はマークス・アラバマ号よりも波が強く、近づくのは映画よりもはるかに困難だということになる。

ただ、「撮影用のため、コンテナの中身は全部空っぽだった」ということも考えられる。いずれにしても、「映画よりも波が荒いはず」というのは確かである。

さて、映画ではマークス・アラバマ号に接近した海賊たちが鉄のはしごをかけて侵入してくる。はしご一本では足らず、夜中のうちに溶接して2本のはしごをつなげている。何度かのトライの末はしごが船に引っかかり、一人ずつ乗船してくる。

オーシャンドリーム号に接近することが難しいとはいえ、決して不可能ではない。オーシャンドリーム号もこんな感じで侵略されてしまうのだろうか。

だが、ここでさっき述べた、「甲板までの高さが決定的に違う」という事実が効いてくる。

映画では海面から甲板までの高さは大体、2階建ての家の屋上ぐらいの距離だ。

一方、オーシャンドリームの場合、最も低い甲板でも4階建てビルの屋上ぐらいの高さがある。

すると、海賊たちにとって問題がいくつも発生する。

問題① 小型ボートで「ビル4階建て分の長さ」のはしごを運ぶことは可能か。

そんな長いはしご、ボートのどこに置くのか。うまく置けたとして、かなり邪魔になるはずだし、航海中も不安定でしょうがない。だいたい、そんな重いはしごを乗っけたら船の重心がくるって転覆しかねない。

そもそも、「ビル4階建て分の長さ」のはしごはいったいどのくらいの重さがあるのだろうか。

そこで、いろいろなものの重さを計算できるサイトの力を借りた。

ちょこっと重量計算

これによると、直径30㎜、高さ3mの鉄パイプの重さは16.69㎏。

「はしご」はこの鉄パイプ3本を使って作れるとすると、その重さは約50kg。

十分人一人分の重さであり、よくこんなの持ち上げたな海賊、と感心するが、

これはあくまでも「建物1階分の高さ」である。

ということは、海賊が持ち上げた「建物2階分の長さのはしご」の重さは約100kg! にわかには信じがたいが、世の中400㎏を持ち上げる人もいるからなぁ。

もっとも、映画で見る限り、はしごは2階分の中さより少し短いようだ。

誤差も考えて実際は83㎏ぐらいだったのではないか。

オーシャンドリーム号の壁を昇ろうとしたら、長さはさらに倍近く必要になる。11mとすると計算してみると、約180㎏。これを持ち上げるにはプロレスラーのチャンピオン並みの体力が必要である。

海賊がオーシャンドリーム号を占領するには、長さ11m、重さ180㎏の鉄梯子をボートに乗せて海を渡る必要がある。重さは乗組員3人分以上だ。荒波を渡る中でどっちかの舷にはしごがよれば、船が転覆しかねないし、前後のバランスを間違えれば、やっぱり船が転覆する。本当に厄介な代物だ。

そんな邪魔なはしごを乗せて波をちゃぷちゃぷかき分けてオーシャンドリーム号のわきに来た海賊たち。さあ、はしごをかけるぞ!

ここで新たな問題が浮上する。

問題② どうやって180㎏のはしごを船にかけるのか。

持ってくるだけでも大変なはしごである。これを持ち上げてオーシャンドリーム号にひっかけなければならない。

同じ180㎏でも相手がダンベルだったらまだ楽だった。両手でつかんで垂直に持ち上げれば、常に重心が自分の足元に来るからだ。

しかし、この長さ11mのはしごの端っこを持って持ち上げようとすると、どうしても重心は数m先になる。これを持ち上げるのは大変だ。

そもそも、「はしごの端っこを持つ」ということは、「はしごのもうかたっぽが海に大きく突き出ている」ということであり、相当バランスが悪い。

転覆を防ぐためには、海賊たちが力を合わせる必要がある。映画の中で海賊たちは4人、はしご50㎏だったが、今度のはしごは映画のものより130㎏重いので、乗組員は2人にした方がいいだろう。

2人で力を合わせて重心の調節をして、力を合わせて持ち上げなければならない。何せ、今度のはしごは「重い」だけでなく「長い」のだから。

はしごの真ん中を持って、ぐるっと回して立たせる、という方法もある。それでも、180㎏ある長いはしごを持ち上げ、海の浮力に逆らって90度まわし、さらにはしごをひっかけるため5.5メートル持ち上げる。その間ずっと、はしごは持ち上げたまま。

これはいったい、何の拷問だろうか。

2人で協力すれば少しは楽になるのだろうが、その場合、海賊たちが隙だらけになってしまう。オーシャンドリーム号から海賊めがけて、いらない椅子とかテーブルとか落っことすには絶好の機会だ。

それでもがんばって何とかはしごを垂直に立たせた海賊たち。あとはひっかけるだけなのだが、ここで最後の関門が待ち受ける。

問題点③ どうやって揺れる船にはしごをひっかけるのか。

船は揺れる。海賊たちのボートも揺れるし、オーシャンドリーム号も揺れる。足場も目標物も不安定だ。

さらに、長さ11mにもなるとちょっとの誤差が命取りだ。手元が5度狂っただけで、12m先のはしごの先端は5mもずれるのだ。

これは、手元が5度狂うと、重心が1.4mもずれることを意味する。

どう考えても、はしごをうまくひっかけられるより早く重心が傾き、はしごは倒れる。

はしごが傾き始めたら、なるべく遠くまで180㎏あるはしごを放り投げることをお勧めする。はしごが海に沈む際に端っこが船のヘリに激突したら、船も道ずれにしかねない。

甲板からの侵入はかなり腕力と集中力を使う。

では、窓からの侵入はどうだろうか。窓ならはしごの長さは3m位で済むはずだ。それならば重さは50㎏位で済むだろう。

と考えた人に、この写真を見てもらいたい。

オーシャンドリームの窓には、あまりとっかかりがない!

これでは、ゆらゆら揺れる船に50㎏のはしごをかけても、すぐに外れてしまう!

この場合、5度手元がずれると、40㎝はしごがずれ、10㎝重心がずれる。やっとこさはしごをかけても、すぐ外れる。


これでもまだ、海賊が怖いだろうか。

結論:どうやって海賊がこのオーシャンドリームを攻略するのか、逆に教えてほしい。

ピースボートに洗脳・マインドコントロールは可能か?元乗客が検証!

今回は、以前に書いたピースボートで本当に洗脳されるのか、元参加者が検証してみたの続編である。ピースボートに乗客を洗脳・マインドコントロールする力があるのか、専門書をもとに検証していきたい。前回は「洗脳」という視点のみだったが、今回は「マインドコントロール」の視点からもっピースボートを見ていきたいと思う。


西田公昭『マインド・コントロールとは何か』

今回は、立正大学心理学部教授の西田公昭氏が1995年に出版した『マインド・コントロールとは何か』という本をもとに検証していこう。

洗脳とマインドコントロールは違う!

まず、この本を読んでわかったのが「洗脳とマインドコントロールは別物」ということだ。

「洗脳」とは、相手を長期にわたり拘束し、拷問・暴力・脅迫・薬物などを用いて、相手の思考を支配する方法である。

一方、「マインド・コントロール」はこれらの手段を用いない。そこに違いがあり、両社は別物、むしろ対極の存在だ。

ピースボートは洗脳しているのか?

元乗客という経験から言わせてもらうと、

洗脳に関しては絶対にありえない。

ピースボートのスタッフから拘束されたり、拷問・暴力・脅迫・薬物の類を受けたことはない。

「ピースボート」「洗脳」で検索してみるといろいろ出てくるが、本当に洗脳されていると思うのであれば、それは「ピースボートの船内で拷問・暴力・脅迫・薬物投与が日常的に行われている」と認識しているということである。

本当にそう思うのであれば、ネットでギャースカ言ってないで、物証をつかんで警察に情報提供するというのが良識ある人間のすることだろう。ネットで騒ぐだけの人は、「洗脳とマインドコントロールの区別もつかない」無知な人間の妄言であり、そんなものに耳を貸す必要はない。

問題は、マインドコントロールだ。

ピースボートはマインドコントロールをしてくるのか。これに関しては時間をかけて検証しなければならない。

ちなみに、Twitterで「ピースボート」「マインドコントロール」で検索すると、「洗脳」の時と比べて極端にツイート数が減る。ヘンなの。

マインドコントロールへの道① 情報の偏り

左翼側に偏った情報を刷り込まれる。これがピースボートが洗脳だのマインドコントロールだの言われるゆえんだろう。

マインドコントロールをしようとするときは、その団体の主張に相手を注目させる必要がある。

どのような情報に人は注目するのかというと、

・弁別性のある情報=目立つ情報

・一貫性のある情報=繰り返しだされる情報

・合意性のある情報=みんなが「そうだそうだ」という情報

が挙げられる。

確かにピースボートでその手の話題は目立つし、賛同者も多い。つまり、ピースボートの船内は左翼的な情報に注目しやすい環境だ。

だが、これだけは企業のCMやネット右翼のツイートをを見ているのとそう変わらない。これらの特徴は、僕らが毎日見ているテレビCMとそう変わらないのだ。

マインドコントロールへの道② ようこそ、ピースボートへ

参考文献には、カルト勧誘の手口として次の5つが挙げられていた。いずれも、相手の冷静な判断力を奪う方法だ。

①返報性

人はサービスを受けると、お礼をしたくなる。カルト教団などはこれを利用してターゲットに親切にして、「話くらい聞いてもいいかな」と思わせる。

ピースボートにおいては説明会が考えられる。無料で行われてはいるが、不自然に親切、というわけではない。そもそも、説明会に来ている人は最初から話を聴くつもりで来ているのだ。

②コミットメントと一貫性

いきなりハードルの高いことをさせず、ハードルの低いことからさせて、少しずつ要求のハードルを上げていくことで組織の主張を信じやすくさせる。

ピースボートのボラスタが最初にやる活動と言えばポスター貼りだ。

ぼくは初日から30枚ポスターを持ていき、最初の10枚は「ベテラン」と呼ばれるボラスタと一緒に回ったが、残り20枚は一人で回った。

どこがハードル低いねん! 「ポスター貼りあわない」と言って、ポス貼りをやらずに船に乗った人を何人も知っている。むしろ、「いきなりハードル高いことをさせる団体」とも言えるだろう。

③好意性

相手に親しみやすい人や、相手の好みの人を使う。

スタッフが乗客に近い距離で接したり、容姿端麗な人を使う、というものだ。

スタッフが容姿端麗かどうかは、「人の好みによるだろう」としか答えられない。ただ、おしゃれな人は多い。奇抜なファッションの人も中に入るが。

ただ、スタッフと乗客の距離が近いというのは大いにあてはまる。そこがウリの一つ、と言ってもいいくらいだ。

④希少性

「今だけ!」という限定品で釣る。

僕が乗った88回は当初「30歳未満99万は今だけ!」と言っていたが、後に「好評につきサービス継続」となった。

だが、船は年間3回地球を一周しているので、「今を逃したらもうチャンスはない」という宣伝の仕方は基本していない。

むしろ、この程度の限定品商法は、どこの企業も普通に行っている「企業努力」の一環だ。

⑤権威性

「著名人」や「専門家」の肩書を利用する。

ピースボートクルーズの目玉の一つは、ゲストとして乗船する水先案内人だ。彼らは著名人や専門家が多い。どう見ても権威性に頼っていると言える。

 

「乗船までの手法」はマインドコントロール度40%と言ったところだろうか。まったくその要素がないわけではないが、「カルト的」と断じるにはちょっと無理がある。

マインドコントロールへの道③ 5つのビリーフ

さて、マインドコントロールするには、「入会させる」だけではいくらなんでも不可能なのは自明のことと思う。

そのためには「ビリーフ」を置き換えなければいけない。

ビリーフとは、白い男性用パンツのことである。あ、それはブリーフでした。

ビリーフは、いわば「レッテル」に近い。「〇〇は✕✕だ」という認識のことだ。「ピースボートは素晴らしい団体だ」も、「ピースボートはとんでもねー団体だ」もビリーフだ。あくまでも「認識」であって、事実かどうかは関係ない。

このビリーフを自分たちに都合のいいものに置き換えられれば、マインドコントロールできるというわけだ。

では、どんなビリーフを操ればいいのだろうか。それは次の5つである。

①自己  「僕は誰なんだろう」という認識。

②理想  「自分はこうあるべき」「世界はこうあるべき」という認識。

③目標  「自分はこのように行動しなければならない」という認識

④因果  「世界はこの法則で動いている」「歴史の影にはいつも〇〇がいる」「陰謀だ!」という歴史や世界に対する認識。

⑤権威  「先生の言っていることは正しい!」という認識。

この5つを変えてしまえば、マインドコントロールできるのだ!

マインドコントロールへの道④ さあ、ビリーフを変えよう

さて、どうやってビリーフを変えていくのか。ピースボートの実態に即してみていこう。

STEP.1 ターゲットに接触する

まず、ターゲットとの接触段階である。マインドコントロール団体は、相手に合わせたメッセージを巧みに使って接触してくる。それは、次の4つの欲求に即したものだ。

①自己変革欲求  相手の罪悪感や劣等感をぬぐうようなメッセージを発信する。「君はダメ人間じゃない」といった感じだ。

②自己高揚欲求  相手の価値を認め、目的を与えてあげる。「君は素晴らしい。そんな君の能力なら、世界を変えられる」といった感じだ。

③認知欲求  相手の知らない真実を教える。コンビニ本の陰謀論みたいな感じだ。

④親和欲求  相手の孤独をぬぐう。「君は一人じゃない」「俺たちは仲間だ」といった感じだ。

どれもピースボートで言われたことがあるような気もする。③に関してはピースボートの真骨頂と言ったところだろうか。

ただ、一方でこうも言われたことがある。

「船に乗ったからって何かが変わるわけではない」

これは①②と相反する話だ。

ちなみに、乗船者が船の中でいろんなことを学んだあと、口にする言葉がこうだ。「結局、俺らに何かが変えられるってわけでもないよね」。これまた②とは反する結果だ。

STEP.2 自分たちのビリーフをアピールする。

ターゲットに接触したら、自分たちのビリーフを魅力的に伝える必要がある。

「自分を変えたい」と思っている人には「変われる変われる!」という自己ビリーフを与える。

「世界を変えたい」と思っている人には「世界を変える力が君にはある!」という理想ビリーフを与える。

「目標がない」と思っている人には「ここを目指そう!」という目標ビリーフを与える。

「これからの世界はどうなっていくのだろう?」と思っている人には「世界はこうなっている」という因果ビリーフを与える。

「誰を信じたらいいの?」という場合は「この人を信じなさい!」という権威ビリーフを与える。

どれも思い返せば、ピースボートにあてはまる気がする。

ピースボートでは水先案内人の講演会が行われる。ほとんどが著名人や専門家だ。この時点でもう、権威ビリーフである。いろんな人がゲストでくるが、中には自己ビリーフ理想ビリーフに当たる話が得意な人もいる。

因果ビリーフに関しては、ピースボートで最も取りざたされる話だろう。確かに、「平和」や「国際交流」などに関する話は多く、中には日本の歴史教科書では教えないような話も出てくる。

ただ、「因果ビリーフ」として確立するには、「世界の法則はこうだ!」レベルにまで高める必要がある。ピースボートで提供される情報はばらばらで、それらを関連づけて教えてくれるわけではない。

一方、「目標ビリーフ」に関してはピースボートではあまり当てはまらない。

STEP.3 5つのビリーフを関連付ける

5つのうち4つのビリーフをピースボートは提供する。やっぱり、マインドコントロール団体なのか。

ただ、この5つをバラバラに与えるだけではだめだ。5つをそれぞれ関連付けなければいけない。

つまり、

「自分の良くないところを改善し(①自己ビリーフ)、理想の自分になれる(②理想ビリーフ)。更なる高みを目指し(③目標ビリーフ)、世界の仕組みを知る(④因果ビリーフ)、それができるのはピースボートだけ!(⑤権威ビリーフ)」

という教義に近いものを植え付けなければいけないのだ。5つのビリーフを関連付けた物語を作らなければいけない。

この「教義」や「物語」に相当するものがピースボートには決定的に欠けている。

ピースボートは情報、すなわちビリーフは与えるが、それらを関連付けて物語を作るということを全くしない。特に、自己ビリーフ・理想ビリーフと因果ビリーフの間の関連性が全然ない。

僕自身、ピースボートの主張というものを知らない。8か月ボランティアスタッフをして、108日船に乗り、その後も事務所に顔を出しているが、「現在、公式に主張しているのは①戦争反対と②9条賛成の2つだけ」ということしか知らない。しかも、それ自体1度聞いただけで、正直これであってるかなといううろ覚えのレベルでしかないのだ。

ピースボートが乗客をマインドコントロールするには、ピースボートの思想を中心とした教義を作らねばならない。

STEP.4 ビリーフを受け入れさせる

ビリーフによる教義を作っても、受け入れてもらわなければ話にならない。聖書の内容を知っていても、それを信じるかどうかはまた別な話なのと一緒だ。

その方法としては次のようなことが考えられる。

感動や興奮を利用する方法がある。カルト教団がよく使う手法だ。ピースボートでは運動会などのイベントで感動や興奮をすることはあるが、講演会などで感動・興奮をすることはまれだ。

考えるよりも行動させる、という方法もある。ただ、ピースボートでは船の中にいるので行動がものすごく制限される。考える時間の方が圧倒的に長い。

アイデンティティを攻撃するという方法もある。罪を告白させたり、相手を攻め立てたりして、自尊心を崩壊させるという方法だ。だが、ピースボートでこの手の手法は一切行われていない。

 

このように見ていくと、ピースボートはSTEP.2で止まっていることがわかる。マインドコントロールの要素が全くないわけではないが、ただ単に情報を垂れ流すだけでは人を操ることはできない。それだけなら、相手の欲しいものをちらつかせ、「新しい生活をしよう!」というビリーフを押し付けてくるスマートフォンのCMと大して変わらない。

マインドコントロールへの道⑤ ずっとマインドコントロール!

さらに、一時的にマインドコントロールに成功しても、その状態を継続させないと意味がない。ピースボートにおいては「船に乗ってる時は平和運動に関心があったけど、船を降りたらもうどうでもいいや」ではマインドコントロール成功とはいえないのだ。

ずっとコントロール状態にするには、情報・感情・行動・生活を管理していく必要がある。

情報の管理

情報を管理するには閉鎖的な場所に置く必要がある。そういう意味では「船」はうってつけだ。

だが、地球を一周したらおろされてしまう。こちらが「まだ乗ってたいよー!」と喚いても、「いいから降りろ!」とおろされてしまうのだ。これは、カルト教団などではありえない。

情報管理の方法として、スケジュールで縛って吟味や意見交換をさせない、というものもある。また、「教義」を受験勉強のごとく勉強させるというものも挙げられる。

だが、ピースボートの船内は自由時間しかないし、勉強時間もない(英語の勉強をしている人たちはいるが)。そもそも、教義が書かれたテキストが存在しないし、何度も言う通り教義自体が存在しない。

感情の管理

感情の管理の方法では、自分たち以外を敵と思わせる方法があるが、「ピースボートの外は敵」!だなんて思ってたら、とてもじゃないがポスター貼りなんかできない。ポスター貼りが終わるころには、貼らせてくれた人たちへの感謝でいっぱいだ。

感情管理の一環で、離脱を認めずに団体に依存させる、という方法もあるが、どれだけ依存しようと地球一周したら強制的におろされるのは先ほど書いた通り。

行動の管理

行動を管理する方法としては、団体の意にあう行動をしたら褒め、意に背く行動をしたら罰する、という方法がある。

積極的に行動する人が褒められるという風土は確かにある。罰に関しては僕は聞いたことがない。

生活の管理

単調な生活を送らせ、生活を管理することで思考能力を奪う方法がある。

しかし、船では常に何らかのイベントがあるし、寄港地は刺激に満ちている。

また、恋愛を制限することで生活を管理しようとする。これも当てはまらない。どこぞのアイドルじゃあるまいし、船内は恋愛自由だ。自由すぎるほどだ。

毎日重労働を課し、肉体疲労を持って管理する方法もあるが、基本、船内生活は疲れない。むしろ、船に乗って運動しないから太る人が多いくらいだ。

 

このように見ていくと、ピースボートはびっくりするくらい教義定着の努力をしていない(そもそも教義がないのだが)。情報は与えるが、あとはほったらかしなのだ。

まとめ

確かにピースボートは左翼的な情報を魅力的に流す。しかし、それを「教義」としてまとめ、相手に受け入れさせ、定着させる要素が決定的に欠けている。これでは、テレビCMの域を出ない。

逆に言うと、この程度であっさり洗脳されて帰ってくる人は、地球上のどこへ行っても洗脳されて帰ってくるだろう。それどころか、テレビCMでも怪しい。新商品や限定品を宣伝されるままにホイホイ買ってしまう危険がある。

一方で、ピースボート側が悪意を持ってマインドコントロールしようとすれば、教義を作り、相手に受け入れさせ、定着させるだけでいいともいえる。その辺、ピースボートは気を引き締めて活動するべきであろう。

それでも「ピースボートはマインドコントロール団体だ!」と主張する人へ

マインドコントロールされている人は表情でわかるという。だから、どうしてもピースボートがマインドコントロール団体だという証拠が欲しいのであれば、船から降りてきた人の表情をチェックすればいい。

とても疲れていたり、何かにおびえていたり、敵意むき出しだったり、バカにしたような態度をとっていれば、マインドコントロールされている可能性がある。

たいていは笑顔で船から降りてくるのだが。

海の上の老人ホーム?ピースボートの高齢者世代に若造が物申す!

以前に「ピースボートで本当に洗脳されるのか、元参加者が検証してみた」と言う記事を発表したところ、「シニア世代には考えが凝り固まった人が多い!」とのご意見をいただきました。反響はうれしい限り。と言うわけで、今回は「ピースボートは高齢者世代に若輩者が一言物申す!


ピースボートの9割はシニア世代

ピースボートの乗客と言うと、若者のイメージが強いだろうか。

実は、9割は高齢者世代である。

僕が乗船した88回クルーズは「30歳未満99万円」だったのもあって若者が多いと言われているが、それでも8割が高齢者世代だ。

船内では高齢者世代を「シニア層」と呼んでいる。明確な定義はないが、だいたい50~60代以上の人を僕らはシニア層と呼んでいた。

そもそも、船の世代構成はどのようになっているのだろうか。

僕の感覚では、若者は18~24歳くらいが多かった気がする。これより下の世代はほとんどいない。

もっとも、クルーズによっては船内保育園がある場合もあり、そういったクルーズならば幼児の姿も多く見かけるだろう。

20代後半以上になると、少しずつ数が減っていく。30代になるとさらに数が減る、40代や50代はほとんど見かけない。この世代は働き盛りで、仕事を休む・退職して船に乗る、と言う決断はなかなかしづらい。しかし、60代以上になると一気に数が増えるのだ。

若者は朝が遅い。そのため、朝のピースボートのフリースペースはほとんどシニア層である。さながら、海の上の老人ホームと言ってもいい。

どうしてピースボートは高齢者世代が多いのか

どうしてこんなに世代に偏りが生まれるのだろうか。

簡単に言えば、原因はお金と時間である。

地球一周のハードルとして大きいのがお金と時間だ。

若者は、時間がある。学生はもちろん、まだ社会で重要な役割を占めているわけでもないし、独身者も多い。

しかし、若者にはお金がない。さらに、「履歴書に穴をあけると復帰しづらい」と言う意味不明な社会の風潮もある。

30~50代になってくるとお金はあるが、責任ある役職に就くうえ、家族もいるのでなかなか会社を休んだりやめたりができなくなる。

そう考えると、シニア世代はお金も時間も存分にある。数が多くなるのは必然なのだ。

実際、シニア層に船旅はお勧めだ。移動に疲れないからだ。船での移動中はじっくり体を休めたり趣味に精を出したりして、寄港地だけ頑張ればいい。寄港地でもバスツアーなどがある。

シニア世代に一言物申す!

分母が大きくなれば、当然その中にはマナーが悪いシニア層もいる。

びっくりしたことがある。

船内の通路は狭く、人二人並べばもう通れない。すれ違うときはちょっと気を使う一方、普段話さないような人とでもすれ違う時ぐらいは「おつかれー」などとあいさつをするので、それきっかけで仲良くなる場合もある。

その通路にシニア層が4人でたむろして通れなかったという経験がある。

ただでさえ狭い通路に4人がたむろして、ぺちゃくちゃしゃべっている。小学校の頃「道路では広がらないようにしましょう」と言う教育を受けた僕は、この光景に唖然とした。

また、友人の自主企画に出席した際、ペチャクチャしゃべっているシニア層を見たこともある。黙って聞いてろよと言う言葉が出かかった。

さらに、ちょっとしたトラブルから、僕が非を認めて謝罪したにもかかわらず「ぶっ飛ばすぞ」と脅されたこともある。僕の勘違いが原因だったのだが、殴られるほどの失態を犯したわけではないし、そもそも僕は自分の非を認めて謝罪した後にもかかわらず、なのだ。「ああ殴れよ。殴ったら困るのはそっちだぞ」と言いたかったが、友人の大切な企画の最中のことで、僕が殴るのはもちろん、殴られるのも邪魔をしてしまうのでぐっとこらえた。

「迷惑」とまで行かなくても、「マナーとしてどうよ」と主たことは何度もある。

ピースボートではいろんな企画があり、参加者にも質問や意見を主張ができるものも少なくない。

不思議なことに、シニア層の人は「自分語り」から入ることが多いのだ。

「え~、私は〇〇県から来た××と申します。長年△△業に携わっていまして~」

人にものを尋ねる前に自分から名乗るというのは大変礼儀正しいことだが、正直、そこまで求めていない。

そして、ここから自分語りが始まる。経歴紹介などをし始めるのだが、はっきり言ってそれがこの企画とどう関係しているのか、どう質問につながるのか、一体何を聞きたいのか、さっぱりわからない。だいたい3分くらいしゃべっていて、イライラがピークに達してもまだしゃべり、ようやく質問に入る。黙って聞いていれば質問だけ言えば言いような内容ばかりである。

不思議である。昔は会社などでプレゼンをやっていた人もいるはずである。どうしてこんなに要領を得ないのか。年を取ってまとめるのが弱くなったというよりは、最初からまとめるつもりがないのだ。

また、考えの凝り固まった人も多い。意見の合わない人に頭ごなしに怒鳴り散らすのを見たこともある。言われた方の人は「あなたたち上の世代のそういう態度は、下の世代から見ると恐怖なんです」と反論していた。

これはピースボートだけの問題ではない

今、ピースボートに限らず、日本中で「キレる老人」が問題となっている。確かに、町中を歩いていても店や駅などで声を荒げているのは高齢者世代が多いように感じる。

また、万引きの高齢かも問題になっている。まったく、最近の年寄はなってない!

と言いたくなるが、どうやらこれは老いからくる生理現象らしい。

人間は年を取ると前頭葉の働きが衰える。そのせいで感情のコントロールが難しくなってしまう。

テレビでそのように解説した後「年寄り笑うな行く道だから、と言うことで大目に見ましょう」などと言っていた。

だが、「迷惑をかけられる」と「被害をこうむる」は全く違う。迷惑をかけてしまうのはお互いさまだが(そもそも僕はADHDという、他人に迷惑をかけることが前提の生き物である)、相手に被害を与えていい理由、相手の気分を損ねていい理由、人を恐喝していい理由には全くならない。そこは声を大にして言いたい。

ピースボートで好かれるシニア世代になるために

ここまで来るとピースボートは希望難民御一行様どころか、単なるマナーの悪い老人ホームのようにも聞こえてしまう。

しかし、もちろん尊敬に値するシニア層も多い。マナーの悪いシニア層と交流することなどないが、尊敬に値するシニア層との交流はとてもためになる。

そんな尊敬すべきシニア層の皆様を思い出して、どう振る舞えば好かれるシニア層になれるかと考えたところ、一つの結論に達した。

それは、年齢など忘れることだ。

好かれるシニア層と言うのは、相手が自分の子供や孫ぐらい離れていても、年齢の差を感じさせず、対等に扱う人が多い。対等に接してもらえると、むしろこちらも敬意を感じるのだ。

また、自分から若者の中に飛び込む人もいる。一緒になってはしゃぐと、多少のことはあっても「どこか憎めない」となるのだ。

あるシニア層の人は「ピースボートは若者が主役で、自分はそれを支えるのが役目」と言っていた。そうやって一歩引いた態度をとれる人は本当に素敵だと思う。

いろいろ言ったけど、お年寄りは大事にしよう!

ここまで、今までほとんど人に言わなかったシニア層への不満をぶちまけた。中には自分の中でもやもやしたままだったものもあり、おかげですっきりした。

とはいえ、どうしてピースボートが若者を安く船に乗せられるのか、と言うのを考えれば、答えは「きちんとお金を払って乗っているシニア層がたくさんいるから」と言えよう。

ただでさえ、船旅をっかく・運営するというのはお金がかかるのだ。おまけにピースボートは安いことで知られている。どういう経営状況なのかは見当もつかないが、とりあえず今日までつぶれずに活動している理由の一つが、お金を払ってくれるシニア層であることは容易に想像できる。「若者だけの船」だったら格安で地球一周は難しいかもしれない。

ただ、金さえ落とせば威張っていい、と言うわけではない。敬われるシニア層はやはりそれなりのふるまいをしているのだ。

これからピースボートに乗ろうというシニア層の人にはぜひ、敬われるシニア層になってもらいたい。そして、若者にはぜひとも、そんな尊敬できるシニア層との交流を楽しんでもらいたい。

ピースボートで本当に洗脳されるのか、元参加者が検証してみた

「ピースボートに乗ると左翼団体に洗脳される」。これはネットでまことしやかに飛び交う噂だ。その噂が本当かどうか今回は検証する。いったいどういう人が洗脳されやすいのか。どういう風に人は洗脳されるのか。ピースボートでそれは当てはまるのか。ぜひ、自分の目で確かめてほしい。


ピースボートに乗る人は洗脳されやすいのか?

まず、一体どういう人が洗脳されやすいのかを検証していく。ネットで調べてみると、「洗脳されやすい人の特徴」というのはいろいろあるらしいが、いくつかのサイトに共通して書かれていたのが次の6つだ。

・日々の生活に強いストレスを感じている

・まじめ

・人を疑うことを知らない

・自信過剰

・一人で結論を出せない

・スピリチュアル好き

この6つがピースボートの参加者に当てはまるか検証していこう。

日々の生活にストレスを感じている?

いきなりだが、これは結構当てはまる人が多いと思う。学校だったり、仕事で行き詰ってしまい、ピースボートに参加するという人は僕個人の実感としては結構多い。

まじめ?

みないい人である。約束はちゃんと守るし、頼まれた仕事はちゃんとやる。

しかし、「社会のレールを疑わない」という意味でまじめかどうかと聞かれたら、「不真面目」と答えざるを得ないだろう。

アートだったり、芸能活動だったり、海外留学だったりと、世間の常識などなんのその、ぶっ飛んだ生き方をする人が多い。だいたい、「仕事辞めて船に乗りました」なんて言ってる時点でぶっ飛んでいるのだ。

一方で、国際情勢や社会問題に強い関心を持つ人も多いのもまた事実。「真面目」という観点では「人それぞれ」という答えになるだろう。

人を疑うことを知らない?

これはあまり当てはまらない。ピースボートに乗ろうとする人は、だいたいが「左翼団体がどうとか、評判悪いけど、この団体、大丈夫かな?」という思いを抱いて説明会に行く。

ボランティアスタッフとして活動していればなおさら。ポスター貼りで心無い言葉を浴びせられ、人間不信になるなど一度や二度の話ではない。

おまけに、寄港地に乗ったらタクシーでぼったくられ、常にすりに警戒する。特に、女の子と一緒にタクシーに乗った時の警戒心はMAXに達する。

人を疑うことを知らない人間は、寄港地で間違いなく死ぬ。運が良ければ、財布を無くして帰ってくるだろう。

自信過剰?

『俺が騙されるわけないだろ』と思っている人ほど騙されるらしい。これは、本当に人それぞれだと思う。

一人で結論を出せない?

これに関しては全く当てはまらない。「地球一周したい」というと、だいたい家族も友人もひっくり返る。

むしろ、「家族の説得」がどうやら地球一周の壁の一つらしい。

つまり、多くの人が一人で地球一周を決めるのだ。

僕に関していうと、家族には全くないしょで資料を取り寄せた。

ピースボートの参加者は、行動力の塊みたいない人が多い。自分の意志でズバズバ決めて、行動していく人ばかりである。

スピリチュアル好き?

これもまた人それぞれ。少なくとも、船内で宗教の勧誘などの活動をすることは禁じられている。

こうやって見ていくと、「ピースボートに乗る人は洗脳されやすいか」の答えは、「人それぞれ」だと思う。むしろ、一般社会よりやや騙されにくい人たちのような気もする。

ピースボートは洗脳しようとしているのか?

では、ピースボートの団体の方はどうだろうか。

これまた調べてみると、洗脳のプロセスとして次の6つが挙げられるらしい。

・寝不足にして思考を鈍らせる

・怒鳴って人格を否定される

・不安にさせる

・依存させる

・日常から切り離す

・刷り込む

この6つがピースボートに当てはまるか検証していこう。

寝不足に追い込む?

これは完全に当てはまらない。何時に起きて何時に寝ようが個人の自由だ。僕はよく昼寝をしていた。

深夜12時くらいになると、居酒屋を除き、もうみんな寝ている。夜更かししてても楽しいことなどない。深夜アニメも深夜ラジオもないのだ。

起きるのは人それぞれ。朝日を拝もうと早起きする人もいれば、10~12時台に起きてくる人もいる。

ただし、船内チームによっては寝不足になるチームもある。

怒鳴って人格を否定する?

ピースボートの関係者から怒鳴られたことはない(怒られたことならあるけど)。もし、怒鳴られた人がいるとすれば、それは何か事件を起こした時くらいだろう。

人格を否定するどころか、何か特技がある人は一般社会よりも褒められやすい環境だと思う。

不安にさせる?

これは当てはまるだろう。社会問題系の企画やツアーに行った場合、不安どころか、打ちひしがれて帰ってくる人もいる。

ただ、それを消化する時間は山ほどある。

依存させる?

船を降りる日が近づくと、「終わってほしくない~!」となる。これを依存と呼ぶなら、学校の卒業間際の「卒業したくない~」も立派な依存と言えるだろう。

だが、現実は船を降りた後、皆それぞれの道を進んでいく。「船の生活に依存して抜け出せない」や「左翼団体の活動に依存して抜け出せない」といった事例は、まだ聞いたことがない。

だいたい、ピースボートで働いている人たちも、一生の仕事としているよりは、他にやりたいことが見つかったらそっちへ行くというスタンスの人が多いようにみられる。実際、ピースボートをやめて別の活動を始めたという元スタッフの話はかなり聞く。「依存」という観点からは当てはまらないだろう。

日常から切り離す?

これに関しては、ピースボートほど人を日常から切り離す団体などあるまい。日常はおろか陸上から切り離して、テレビもネットも見れない。「見せてくれない」のはなく、「そもそも電波が届かない」のだ。外部との連絡も取れない。これまた「連絡させてもらえない」のではなく、「そもそも電波が届かない」。カルト教団や変な左翼団体がかわいく見えるほどの隔離っぷりだ。

刷り込む?

確かに、社会問題を扱った企画は多いし、左翼的な人の方が圧倒的に多いのも事実だ。

だが、何らかの答えを押し付けるようなことはほとんどない。

「情報は与えたから、あとは自分で考えて答えを出せ」というスタンスだ。

考える時間も、議論を戦わせる相手もいっぱいいる。

「刷り込む」という観点からは、「グレー」という答えが適切だろう。

こうやって見ていくと、「不安にさせるような情報をたくさん提示する」という意味では洗脳の条件を満たしている。

しかし、「相手の思考力を奪う」という意味では全く満たしていない。

確かに、日常と地上から隔離されてはいるが、その分、参加者がバラエティに富んでいる。むしろ、多様な価値観、考え方に触れるいい機会だろう。

ピースボート程度で洗脳されるような人間は、おそらく地球上のどんな団体・会社・宗教に行ってもあっさり洗脳されて帰ってくるだろう。

むしろ、ブラック企業の方がよっぽど怖い。寝不足の頭に怒鳴って、刷り込んでくるのだから。まず、思考力を奪ってから、じわじわと会社色に染めていくわけだ。

ピースボートにおいて、洗脳よりよっぽど注意しなければいけないこと

ピースボートに興味がある人に僕から言いたいのは、洗脳よりもよっぽど注意すべきことがある、ということ。

それは、船を降りた後の「ポジティブシンキング」。

船に乗ると、ピースボートという団体うんぬんの前に、360度どこまでも広がる青い海を見た時点で価値観が吹っ飛ぶ。寄港地に降り立つたびに、「日本の常識」がいかに狭いものなのかを思い知らされる。

ピースボートが与えてくる情報よりも、船内生活や寄港地での自由行動中の体験の方がよっぽど強烈だろう。要は「船旅」のインパクトが強いのだ。

また、船の中ではイベント運営、ミュージカル、音楽活動、映像作りなど、さまざまなことにチャレンジできる。

「日本の常識がぶっ壊れる体験」と「いろんなことにチャレンジした体験」が合わさると、「世間の常識にとらわれず、何でもできる!」、「いっそ、日本を、世界を変えられるんじゃないか?」という、自己啓発本のようなポジティブ全能感を抱く人が多いようにみられる(ただし、思考能力を奪うほどではないので、安心してほしい)。

かくいう私も、その一人だった(笑)。

それは決して悪いことではない。特に、それまで自己評価が低かったり、目標が持てなかったりした人の場合はむしろ、「前向きになった」『明るくなった』と評されることもある。

だが、程度の問題である。何事も「ほどほどに」が大事なのだ。

前向きになるのは大事だが、卑屈だったころの自分を忘れてはいけない。

僕はこれを、「過去の自分が背中から銃を突き付けている」と表現している。根拠もなくポジティブなことを言ったりして、「輝いている自分」や「今、幸せな自分」をアピールしようとすると、かつての自分が背中から銃を突き付けて、「なんかかっこいいこと言ってるけど、もしかして俺のこと忘れちゃった? 卑屈で、嫉妬深くて、死にたがり。それがおまえだろ?」とブレーキをかけてくれる感覚。

だから、僕は「昔はダメダメだったけど、今はこんなに輝いています」という人があんまり好きじゃない。ブレーキのない自転車みたいなものだと思っている。

人間である以上、ダメダメな部分が残らないわけがない。むしろなくなったら、「悟りを開いたぞ!」と言って、「阿闍梨」「如来」を名乗ってもいいと思う。

実際は、ダメダメな部分が残っておるにもかかわらず、気づかない、隠している、という人が、この手のタイプには多いと思う。

それよりも、「昔はダメダメだったけど、今は昔より前向きです。でも3日に1日ぐらいは落ち込んで死にたくなります」という人の方が好きだ。

ただ、「ピースボートのに乗れば、みんなめちゃくちゃ前向きになるのか?」と聞かれれば、答えは「程度による」だ。「少し前向きになった」人もいるし、「めちゃくちゃ前向きになった」人もいる。当然だ。同じ船に乗っていても、人によって見える景色は全然違うのだから。

全員が全員、「ポジティブバカ」になれるほど、世の中は、船旅は甘くない。

まとめ

・ピースボートに乗る人は、どちらかというと洗脳されにくい。

・ピースボートは確かに左翼的な情報は与えてくるが、思考力を奪うようなことはしないので、これで洗脳される人はよっぽどである。

・むしろ、前向きになりすぎることに注意した方がいい。

とりあえず、僕の周囲で「船を降りた後、憑りつかれたように左翼団体の活動に邁進している人」はまだ見たことがない。

ピースボート乗船で初めて知った、海の上のアナログすぎる生活体験

現代社会は情報社会だ。ネットにスマホ、テレビなどなど様々な情報を簡単に手に入れられる。しかし、ピースボートに乗船して初めて気づいたことがある。船の上には、これらは何もかもない!ピースボート乗船中ののアナログすぎる生活について書いていこう。ほんと、あれもこれも何にもないよ。


ピースボートに乗船すると、テレビが見れない!

僕らは当たり前のようにテレビを見る。

だが、ピースボートに乗船するとテレビは見れない。

例えば、僕が船に乗っている間に、安保法案が可決し、国会前をデモ隊が埋め尽くすという大騒ぎになったらしい。

「らしい」と言うのは、僕はそのニュースをほとんど見たことがないのだ。一回、船の中でスタッフががんばって報道ステーションのビデオを取り寄せて見せてもらたことがあるが、

安保法案に関する報道を見たのは、後にも先にもそれ一回きりだ。

乗船中にはパリでテロ事件も起きたが、

その報道もほとんど知らない。

船を降りたらなぜか日本ではラグビーが流行っていて、大いに戸惑ったのを覚えている。「あの五郎丸選手が」と言われても、僕は試合を見たことがない。

ピースボートの船では、外部のテレビ番組は一切見れないのだ。

じゃあ、どうやって情報を手に入れているのか。

フリースペースに主要なニュースが書かれている場所がある。そこでニュースを知るのだが、毎日更新されるわけではない。更新頻度は3~4日に一度だ。

新聞もある。どういうルートで手に入れるのか、寄港地で日本の新聞を補充する。もっとも、半月に1度くらいの頻度で、当然古新聞だ。

ちなみに、見れないのは「テレビ番組」であって、テレビ自体は船室にある。

見れる番組は二つ。一日中同じ邦画を流すチャンネルと、一日中同じ洋画を流すチャンネル。洋画は近くの国にちなんだものが流れる。また、船の前から海を撮影した映像がひたすら見れるチャンネルもある。

また、毎日船の中で制作される、船内情報番組もやっている。これに出れば、一躍船内有名人だ。

が、基本船の中でテレビ番組は見れない。

じゃあ、どうするのか。

自分たちで作るのだ。

船のスペースを借りて、テレビ番組のパロディ企画を何度も行った。僕が関わったのではTVタックル、アメトーーク!、のど自慢などのパロディ企画をやった。他にも吉本新喜劇やケンミンショーなど全部自分たちで作るのだ。

ピースボートに乗船すると、電話はつながらない!

このたった十数年で、今や携帯電話を持っていることは当たり前となった。どういうわけか、電話以上の機能までついている。

しかし、ピースボートに乗船したら、電話がつながらない。

当然である。海の上に基地局なんかない。

僕が船内に持ち込んだガラケーちゃんは、寄港地でもピースボートの船内でも通話能力を完全に封じられ、目覚まし時計寄港地でのレート計算の電卓としてしか使えなくなった。

友人では、どうせ使えないのだからと、携帯電話を解約した人までいる。

じゃあ、どうやって外と連絡を取るのか。

絵葉書なんか風情があるだろう。船のレセプションに出せば、寄港地で投函してくれる。

では、船の中での連絡はどうするのか。

船室には電話がある。船室にいれば連絡がつく。

しかし、いつも船室にいるわけではない。

一度、船室の外に出てしまえば、直接会わない限り連絡が取れないのだ。

「〇〇見なかった?」と言うのは日常茶飯事である。

ピースボートに乗船すると、ネットが見れない!

このブログを読んでいる人は、当然インターネットに接続している。今や、世界中で約35億人がネットを利用しているようだ。日本はおろか世界じゅうをつないでいる。

ところが、ピースボートではネットがものすごいつながりにくい。

そもそも、船内でネットを使うには、「ネットカード」というものを買わないといけない。

そのネットカードを使って、船のネット環境にログインできるのだ。

100分で2100円。かなりの出費だ。スマートフォンを持っている人は、寄港地でwifi環境がある場所を探して、そこから動かない。せっかく異国にいるのにもったいないなぁ、とも思うが、どうしても知りたい情報もあるのだろう。

1回で100分使い切る必要はなく、100分を何回かに分けて使うこともできる。だが、きちんとその都度ログアウトをしないと、ネットを使っていないときにも時間が加算されてしまい、100分を使い切ってしまう。せっかくの2100円が無駄になる。

しかも、海の上はネットがつながりにくい。すぐにフリーズしてしまう。フリーズしたまま時間だけが空しく過ぎていく、なんていうこともよくある。フリーズしたまま100分立てば、そこでネット終了だ。

ちなみに、船備え付けのパソコンだと、動画を見ることはできない。


どうだろう。不便だろうか。

でも、「便利」ってどこかの誰かが、「これがあった方が便利だろう」と思わせているだけで、便利な道具がなければ何もできなくなる、なんてことはない。

ないのであれば、人間は自分たちで補うことができる。

テレビ番組が見れないなら、自分たちで作ればいい。

電話がつながらないなら、居場所を知っている人を探せばいい。

ネットがつながらないなら、知っている人に話を聞けばいい。

たったそれだけの手間だ。僕たちは、これっぽっちの手間もかけられないほど、時間に追われて暮らしているのだろうか。

人間の時間は有限だ。でも、一秒たりとも無駄にできないなんて、あんまりじゃないか。

ここ数年でスマートフォンが世の中を席巻し、もはやスマートフォンを持っていて当たり前の世の中になった。

スマートフォン。すなわち、賢い電話。

しかし、どう考えたって電話ごときより人間様の方が賢いはずだ。人間がスマートでいようと心掛ければ、電話なんかにスマートになってもらう必要は全くない。そう信じて、僕はいまだにスマートフォンを持ってない。必要がないのだ。

便利な道具を買うより、不便でも何とかできるようにする方が、頭を使うし、僕にとってはずっと面白い。

ピースボートの海賊水域で自衛隊護衛の矛盾の実態を参加者がツッコんでみた

ピースボートを取り巻く問題の一つが、「海賊警戒水域での自衛隊護衛問題」だろう。自衛隊に否定的な立場をとっていたピースボートが護衛をつけてもらっていいのか?そこで、今回はまず海賊警戒水域について基本的なことを学んでから、この問題について考えてみよう。ピースボート、覚悟しろ(笑)


そもそも、海賊水域での自衛隊派遣問題とは?

世界の海には「海賊警戒水域」というのがある。その名の通り、海賊による襲撃を受ける可能性が高い水域のことだ。

そして、海賊が多いことで有名なのがソマリア沖である。

ピースボートの船がこのソマリア沖を航行する際、海上自衛隊に護衛をしてもらっているのだ。

その証拠写真がこちらだ。

私が撮影しました

さて、自衛隊に護衛してもらって何が問題なのかと言うと、

ピースボートは自衛隊の海外派兵に反対していたというところにある。

ハフィントンポスト紙によると、2009年の取材時に護衛を申請したのはピースボートではなくジャパングレイスだとしたうえで、そもそも海上自衛隊ではなく海上保安庁に要請したと説明。そして、「主張とは別に参加者の安全が第一」と述べている。

ピースボート、海上自衛隊の護衛艦でソマリア沖航海 「主張とギャップの声」 The Huffington Post

「主張とは別に」と言うことは、つまり、自衛隊の海外派遣に反対する主張を掲げている、と言うことである。

これが、「海外派兵に反対していたのに守ってもらうんかい!」と批判の的になったわけだ。

ちなみに、海上保安庁もソマリア沖での海賊対策は行っているが、その内容は「海上自衛隊の護衛艦に同乗する」なので、海上保安庁に護衛を要請しても、結局やってくるのは海上自衛隊の護衛艦である。

海賊対策 海上保安庁

海賊水域の基礎知識

ところで、読者の皆さんは海賊警戒水域と呼ばれるところへ行ったことはあるだろうか。

実は、海賊警戒水域はかなり広い。

ピースボート88回クルーズでは僕の記憶が正しければ、インドのムンバイからスエズ運河に入る直前までが海賊警戒水域だった。日数にしておよそ2週間

海賊警戒水域では具体的に何をやるのかと言うと、夜はカーテンを閉め、光が船の外に漏れないようにする。要は、「あそこに船があるぞ!」とばれないようにするのだ。

後は海賊対策の避難訓練だろう。もっとも、乗客は自分の部屋に戻って決して外に出ないこと以外にやることはない。海賊が乗り込んできても、決して「俺はオールブルーを見つけるんだ!」とかなんとか言って相手の船長の足にかみついてはいけない。

それ以外には、乗客の目から見た範囲では特に変わったことはない。

特に変わったことがなかったということは、私はその2週間の間、一隻の海賊船も見たことがないということだ。ソマリア沖でも命の危険を感じたことはおろか、不審な船すら見たことがない。見た船と言えば海上自衛隊の護衛艦くらい。

海賊なんてそんなめったやたらに出会うものではない。大体、船にはレーダーがついているのだ。不審な船があれば近づく前にわかる。

そもそも、どういう海賊が襲ってくるか、読者の皆さんは知っているだろうか。

イメージはこんな感じだろうか

 

だが、実際はこんな感じらしい。

 

ちなみに、35000tの我らがオーシャンドリーム号はこちら。

11階建て、総重量は35000tである。ちなみに、この写真は前半分であり、当然これに後ろ半分がつく。

どうやってぼろ船がこのオーシャンドリームを攻略するのか、逆に教えてほしい。

もっとも、海上自衛隊によると近年、ソマリアの海賊はマシンガンだのロケットランチャーだので武装しているらしい。

ただ、2005年以降、ソマリア沖で客船が襲撃されたケースはたったの1件のようだ。それも、占領されたわけではなく、ロケット弾の被弾による船体の破損である。

ソマリア沖にて海賊に襲撃された船舶の一覧 wikipedia

客船というのは海賊にとって、よほどうまみがないか、よほどハイリスクかのどちらかであろう。

ちなみに、こちらは2007年に海賊に捕まって解放された日本所有のタンカー「ゴールデン・ノリ」である。

オーシャンドリーム号と比べると、だいぶ小型である。もちろん、大型のタンカーも襲撃を受ける。

というわけで、海賊警戒水域で2週間旅をした私の見解は、「そんな怖い所じゃないよ」である。

とはいえ、世界一海賊の多い海であることは間違いなく、実際に被害も出ている。日本の船も被害にあっている。

そのため、海上自衛隊は2017年2月現在、護衛艦を一隻ソマリア沖・アデン湾に派遣し、年間約1600席通行する日本の民間船を守っている。

つまり、ムンバイから紅海までの長い海賊警戒水域の中で、ピースボートが自衛隊に護衛してもらっているのはソマリア沖・アデン湾という最も危険な水域に限定されている。海賊警戒水域の8割は、護衛艦なしで航行している。

ピースボートが自衛隊に守ってもらっているのは、やっぱり矛盾している

さて、確認できた事実は以下の通り。

①ソマリア沖・アデン湾では海賊による襲撃が多発している。中には未解決・拘束中となっているものも多い。 ソマリア沖にて海賊に襲撃された船舶の一覧 wikipedia

②自衛隊は海賊対処法に基づき、ソマリア沖・アデン湾の水域を通行する日本の船を護衛している。 海賊対処への取り組み 防衛省 統合幕僚監部

③ピースボートのオーシャンドリーム号は、ソマリア沖・アデン湾のみ自衛隊による護衛を受けている。(視認済み)

④ピースボートは自衛隊の海外派兵に反対しており、③の事実はピースボートの主張に反している ピースボート、海上自衛隊の護衛艦でソマリア沖航海 「主張とギャップの声」 The Huffington Post

なるほど。確かにピースボートの行動は矛盾している。

ただ一方で、この事実も見過ごせない。

⑤客船が海賊に襲撃された事例はほとんどない。 ソマリア沖にて海賊に襲撃された船舶の一覧 wikipedia

⑥海賊警戒水域にいた2週間の間、一隻の海賊船も見ていない(経験談)

⑦海賊警戒水域の大半は護衛なしで航行している(視認済み)

このことから、私のこの問題への個人的見解は以下の通りだ。

たぶん、護衛してもらわなくても、客船であるオーシャンドリーム号が襲撃を受ける可能性は低い。護衛を外してピースボートへのツッコみどころを一つ減らしてみてはどうか。

僕個人としては、自衛隊の海外派兵には特に意見はない。ただでさえ「日本は金しか出さない」と言われているのだから、憲法9条の範囲であれば派兵しても構わないと思っている(集団的自衛権はまた別の話なので、ここで意見を述べるつもりはない)。

ただ、護衛を外したら外したで問題があるのだ。

高確率で襲撃されるだろう。

海賊ではなく、クレーマーの。

外からではない。船の中から襲撃されるのだ。

「ソマリア沖で自衛隊の護衛を断るなんて、俺を殺す気か!」

新たな事実として⑧日本ではクレーマーが問題となっている クレーム wikipediaを挙げたい。

この手のクレーマーは自分の要求が通るまで折れることを知らない。「自分の意見は絶対に正しい」と思い込んでいるからだ。

日本社会でクレーマーが問題になっているなら、当然日本人が多い船の中にもクレーマーは存在するはずである。むしろ、いない方が怖い。

こういうブログを書いているとつくづく考えさせられるが、このような考え方はかなり危ない。「もしかしたら間違ったこと書いているかも。もしそうだったら、誰か訂正してくれ」ぐらいの不安感を抱きながら書くのがちょうどいい。

そうでないと、考え方が偏り、修正が効かなくなってしまう。

船はゆらゆら揺れているうちは沈むことはない。恐ろしいのは、傾いたまま元に戻らない場合である。

ところが、この手のクレーマーは傾いたまま元に戻らない。そうなると、「客船はほとんど襲われない」だの、「ほとんどの海賊警戒水域は護衛なしで航行している」と言った客観的なデータは意味をなさない。左脳で判断してくれないからだ。

海賊に遭遇するより、クレーマーに遭遇する確率の方がはるかに高いのだ。

この世で一番理不尽なのは海賊ではない、消費者と乗客と通行人である。

また、クレームを入れてくるのは船の客だけではない。おそらく、護衛を断った際のThe Haffington Postと産経新聞には次のような見出しが躍るであろう。

「ピースボート、海賊が横行するソマリア沖で自衛隊による護衛を拒否! 1000人の乗客の命より政治主張を尊重?」

うむ、我ながら、センセーショナルな見出しだ。

どうせ、誰かから批判されるのである。護衛をつければチキンと笑われ、護衛を外せば人命軽視の汚名をすする。

一体、ピースボートの何をそんなに恐れているのか。設立者の一人がのちに国会議員になってはいるが、本質は一民間団体にすぎないというのに。

要は、「安全だが批判される道」「危険なうえ批判される道」しかないのである。

この二者択一で「危険なうえ批判される道」を選ぶ奴がいるのだろうか。

どうせ批判されるなら『安全だが批判される道』を選ぶのが賢明な判断であろう。

公式にはもうピースボートは「海外派兵反対」を掲げていないらしいが、前言撤回と言うのはあまり効力がないらしい。政治家の「撤回します」が「どうせ本心は違うんだろ?」と解釈されるのと一緒である。

ちなみに、ツイッターを見ていたら、「船の乗組員の安全を考えてのことじゃない?」という意見があった。

確かに、オーシャンドリーム号の運航会社は「シーホークコーポレーションリミテッドインク」と言う全くの別会社だ。ピースボートはこの会社と「年間チャーター」と言いう形で要は船を借りている。今は船の側面にでかでかと「PEACE BOAT」と書かれているが、契約が切れたらこれも消されるであろう。

船内で働くクルー、つまり、部屋の掃除をしてくれたり、料理を作ってくれたり、船を動かしてくれる人のほとんどはこの会社に所属している。インドネシア人が多い。

いくらピースボートが『海外派兵反対』と言っても彼らには関係ない話。それで彼らを海賊の危険にさらすわけにはいかないだろう。そもそも、ほとんどが日本人ですらない。

確かに、ピースボートのやっていることは矛盾している。だが、政治的に筋を通したところで、どうせ批判されるのだ。だったら、矛盾を抱えてでも安全な道を選ぶべきではないだろうか。

海賊警戒水域の真実

海賊警戒水域では船の外に明かりが漏れないようにする。

つまり、オープンデッキの明かりもすべて消すのだ。

その結果何が起こるのかと言うと、星がよく見える。

僕が生まれて初めて「これが天の川か」とはっきり確認できたのは、この海賊警戒水域であった。

世界中の海を回ったが、世界一危険な海が世界一星がきれいだった。

この世界は矛盾で満ちている。

 

~追記 2018.6.29~

それでもやっぱり、ピースボートは一回どっかで、この問題にちゃんと向き合うべきだと思う。確かに今は「自衛隊派兵反対」は掲げていないが、その辺もなんかなあなあになっている気がするし、団体として「自衛隊派兵反対を撤回したこと」「恥を忍んで海上自衛隊に護衛を依頼していること」の2点を、正式な発表として出すべきではないかと思う。記者会見を開くなり、HPのわかりやすい所に掲載するなりして。

僕は「目的を達成するためにはどんな手段をとっても構わない」なんて絶対に思わない。乗客の安全は最優先だが、そのためにもやはり通すべき筋っていうのはあると思う。ピースボートがこの問題に対して何らかの声明を出せば、その内容がどうであれ、必ず何らかの批判の声は上がると思う。ただ、それでも、団体としてきちんと経緯の説明を行うことが通すべき筋なのではないだろうか。いかに人名再湯煎とはいえ、その辺をなあなあにするべきではないと思う。

ピースボートの船旅、外国でガチで焦った3大事件!

旅は、楽しいだけではない。ピースボートに乗った経験者ならば、外国でトラブルに見舞われたことが一度はあるはずだ。日本ではなんてことのないトラブルも、言葉の通じない国では命取り。今回は、ピースボートの度で僕が出くわしたトラブルを、焦りや恐怖を感じた順に3つ紹介しよう。ノック自由堂のシャレにならない話、始まり始まり。


ピースボートの船旅 外国でガチで焦った第3位 トルコの爆走タクシー

外国のタクシーは、結構スピードを飛ばす。ドバイで乗った時も制限速度が80㎞の道をほんの100mほど走るだけなのに、トップスピードまで加速する。ペルーでタクシーに乗った時も、高速道路をサーキットか何かのようにぶっとばしていた。

どうやら、日本が距離でメーターが変わるのに対し、時間でメーターが変わる国があるらしい。こういった国のタクシーではなるべく早く着かないと、「料金あげるために、わざとのろのろ走っただろ!」というトラブルになりかねないのだそうだ。

そんなタクシーで一番恐怖を覚えた国、それがトルコだ。

ピースボート88回クルーズは、トルコのクシャダスに寄港した。野良猫がのんきに暮らす港町だ。

このクシャダスの目玉は、隣町にあるエフェソス遺跡だ。僕らが訪れた2015年に世界遺産になったばっかりである。古代ギリシャの時代に栄華を誇った大都市だ。今でも巨大なアリーナををはじめ、当時の栄華を伝えている。

エフェソス遺跡のアリーナ。ここでラップをしたら、20人ほどのヨーロッパ人観光客が拍手をくれた。

この遺跡はクシャダスから離れているため、行き来にはタクシーを使う。

このタクシーが、とんでもないスピードで飛ばすのだ。

いろは坂のような曲がりうねった山道を、猛スピードで飛ばしていく。カーブに差し掛かっても、減速した様子がまるでない。10回以上、「このままガードレールの向こうに突っ込むのかな」と覚悟した。

だが、助手席に乗っていたピースボートの水先案内人の四角大輔さんは平然としている。大輔さんはニュージーランド在住だ。

「外国のタクシーって、これが当たり前なの!?」と驚愕したことを覚えている。

外国に限らず、日本でも深夜のタクシーはかなり飛ばす。「急いでないから、普通に走ってくれー」といつも思う。

ピースボートの船旅 外国でガチで焦った第2位 フランスの山の中で迷子

ピースボートの船には「帰船リミット」というのがる。要は門限だ。これに遅れると大変なことになる。

船は港に停泊する際、港にお金を支払う。それが伸びれば莫大な延滞料金を支払わされる。デパートの駐車場で時間に遅れると追加料金を取られるのと同じ理屈だ。

だから、帰船リミットに遅れると、しこたま怒られるらしい。

リミットに遅れても、少しは待ってくれる。その代わり、しこたま怒られる。

そして、最悪の場合、置いていかれる。

だから、常に僕は帰船リミットに余裕を持って船に戻っていた。早めに船に戻って、人の少ない船を楽しんだり、デッキに出て港で景色を楽しんだり、早く帰っても結構楽しめる。

事件が起こったのはフランス、マルセイユだ。

マルセイユは港から離れていて、歩いて30分かかる。これまで訪れた国で、タクシーで散々な目にあってきた僕は、歩いて市街地に向かった。

帰船リミットは16:30。余裕を持って13:30には市街地を出た。

行きと同じ海沿いの道ではつまらないので、帰りは違う道を歩いて行った。

いい加減おかしい、と思ったのが14:00ころ。いつまでたっても海に着かない。

海に着かないどころか、むしろ山を登っている。

山といっても周囲は住宅街なのだが。

そう言えば、港から山が見えていた。そのどれかに上ってしまったのかもしれない。

とりあえず、現在地を把握しなければ。

しかし、バス停に書いてある地図はあろうことかフランス語で書かれていて(当たり前)、現在地がわからない。

何とか現在地を把握できたのは、14:30になってからだった。

なんと、僕は港から見えていた山を越えて、もう一つ向こうの山に登っていたのだ!

あと2時間以内に山を下り、登り、また下らないと、船に乗り遅れてしまう!

しかも、港はいくつかあって、帰るべき港の名前がわからない!

幸い、方位磁石は持っていた。そして、西に向かえばいずれは海岸線に出れることもわかっていた。

西へ向かってフランスパンを片手に急ぐ。

頭の中にはもちろん「最悪のシナリオ」だ。

幸い、クレジットカードは持っている。次の寄港地のバルセロナも陸続きだ。

だが、言葉が通じずに現在地すらわからなかった人間が、どうやってバルセロナにたどり着けというのだ!

見覚えのある海岸線の道に出れたのが15:30。真っ直ぐ西に向かっていたはずだが、いつのまにか市街地の近くまで戻っていたようだ。

船にたどり着いたのは、16:00だった。もし、「余裕を持って船に帰ろう」と思わなかったら、とんでもないことになっていた。

それ以来、「必ず港の名前を覚える」「必ず方位磁針を持ち歩く」ようになった。方位磁針は、日本に帰った今でも、見知らぬ街に行く際は持ち歩いている。

ピースボートの船旅 外国でガチにあせったランキング 第1位 インドでパスポートと財布を喪失!

ムンバイの街並み

インドのムンバイで僕は仲間と一緒にタクシーに乗った。行先はムンバイのスターバックスコーヒー。

インドのタクシーのおっちゃんは目の前を歩行者が横切っても、「そんなの轢かれる方が悪いに決まってんじゃん」と言いたげにアクセルを緩めない。おまけに、車間距離ぎりぎりまでトップスピードで近づく。助手席に乗っていた僕はめちゃくちゃ怖かった。

さて、タクシーを降り、スターバックスに入った僕ら。注文をしようとした瞬間、最悪の事実に気が付いた。

肩にかけていたはずの財布とパスポートを入れたカバンがない!

思い返すと、タクシーに乗るとき、カバンを肩から外して助手席の足元に置いた。

そして、そのまま出てきた。カバンをすっかり忘れて。

あわててスターバックスの外に飛び出したが、タクシーはすぐに立ち去った後。

まずい、まずいぞ! タクシー会社に電話しなければ。いや、タクシー会社なんて覚えていないし、そもそも、言葉が通じない。探すのはタクシー会社じゃなくて、日本大使館か(ムンバイには総領事館がある)。

などと2,3分途方に暮れていたら、誰かが肩を叩く。

振り向くと、さっきのタクシーのおっちゃんが、僕の黒いカバンを持ってたっていた!

どうやら、途中でカバンの存在に気づき、引き返してくれたらしい。

おっちゃんには悪いと思いつつも、その場で中身を確認する。パスポートも財布も、財布の中身も全く手を付けられていなかった。

運転中は散々こき下ろしたが、こうなったらもはや感謝しかない。

思えば、ピースボートのポスターを貼っていた時もいつもインド人のカレー屋さんに助けられてきた。まさか、本場のインドでこんな風に助けられるとは。

スターバックス前は結構な人ごみだった。向こうもよく僕を見つけられたと思うが、ぼくは迷子にならないように、オレンジのリュクに赤いバンダナといういでたちだった。それが功を奏したのかもしれない。

ぼくは財布から10ドルを出して、おっちゃんに渡そうとした。おっちゃんは手をぶんぶん振って、とても受け取れないという。

しかし、それではとても僕の気持ちがおさまらない。全部なくしたと思っていたのだ。それに比べれば10ドルくらい、安い。

こうして、カバンは無傷で帰ってきた。おっちゃんには本当に感謝しても感謝し入れない。

それ以来、僕はカバンを絶対に体から外さないようになった。本当に大事なものは首にかける。そうすれば、首を落とされない限りなくすことはない。逆に言えば、首を落とされてしまったら、もう諦めるしかない。


最後の寄港地、サモアで無事船に戻ってこれたとき、「これですべての寄港地を無事に終えることができた」と安堵した。外国の旅は刺激が多く楽しいが、言葉も日本の常識も通じない外国では、予期せぬトラブルが降りかかり、トラブルを解決するのも大変だ。「余裕を持って船に帰る」、「港の名前をちゃんと覚える」、「荷物は絶対に離さない」、これが僕が、トラブルで学んだことだ。

ピースボートに乗船したら、学習・交流系ツアーですごいところに行っちゃった

ピースボートに乗船すると、オプショナルツアーに参加できる。ツアーの中には観光地を巡るものもあるが、現地の歴史や社会問題が学べる学習系、現地の人たちと交流できる交流系もある。今回は、僕が乗船した時に参加した学習系ツアーを1つ、交流系ツアーを2つ紹介しよう。普通の旅ではなかなか行かない、すごい所へ行ってしまった。


乗船した時に参加したピースボートの学習ツアー シンガポール・昭南島の歴史

ツアーの概要

シンガポールは太平洋戦争中、日本に占領されていた。このことを知っている人はあまり屋内と思う。なぜなら、教科書では取り上げないのだから。だが、シンガポールではほとんどの人がこのことを知っている。

当時のシンガポールの名前は「昭南島」。「昭和に手に入れた南の島」という意味だ。

このツアーではほぼ1日かけて、当時の歴史を伝える博物館や日本軍による虐殺が行われたビーチ、いわゆる「からゆきさん」が眠る日本人墓地や、血債の塔などを巡った。

歴史をしっかりと学んだあとは、中華料理を楽しみ、マーライオンを観光した。

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これがからゆきさんのお墓。気づかなければつまづいてしまいそうなくらい、小さい。

ツアーの良いところ

このツアーの良い所は、日本ではあまり知られていない日本の歴史を知れるところだろう。

どういうわけか、日本ではこのことをあまり教えていない。

こういう話をすると「これぞ、ピースボートの左翼洗脳だ!」と声を荒げる人も出てくるだろう。だが、ツアーの参加者の中でも、このツアーには様々な見方がある。

ツアーの後には、参加者による報告会があった。そこで、それぞれが見てきたことを消化した。

その準備の段階で、「アジアでの日本軍の活動は、決して蛮行ばかりじゃない」ということを早くから指摘するツアー参加者もいた。

船に乗っている人たちに左寄りの人が多いのは事実だ。だが、決して傾ききった左翼の船ではない。実に様々な意見が飛び交っている。

この程度で簡単に洗脳されるような人間は、どうせどこに行っても洗脳されて帰ってくるので、あまり心配しなくて大丈夫だ。

報告会では、決して「日本軍批判」に陥ることはなかったと記憶している。

ここで語られたのは、「戦争の狂気」と「シンガポールのたくましさ」だった。

戦争に正義も悪もない。あるのは狂気だけだ。

そして、シンガポールの元大統領・リー・クァンユーは日本に対し、許すけど忘れない」という態度を示した。

日本軍の行いを忘れることは決してないのだろう。

だが、シンガポールは、許すことで国を前進することを選んだ。

強いと思う。日本を含め、このような考えができる国が、世界にいくつあるだろう。

歴史とは、自分を蔑むためのものじゃないし、自分を正当化するためのものでもないし、誰かを傷つけるためのものでもない。

過去を受け入れ、前に進むためにある。

写真 121
血債の塔

ツアーの悪いところ

だが、確かに視点が偏っている感も否めない。

そのことを解消するための報告会であり、その準備であり、意見交換なのだ。

しかし、このツアーの最大の短所はそこではない。

とにかく、重い。若い参加者ではあまりの重さに押しつぶされたような表情をしている子たちもいた。

さらに、観光要素は少ない。マーライオンを観光したが、正直、あまりシンガポールを満喫した感じはしなかった。

シンガポールの夜
それでも、こういう景色は楽しめる

乗船した時に参加したピースボートの交流ツアー パナマ・クナ族のコミュニティ

ツアーの概要

パナマに「クナ族」という部族がいる。もともとはパナマ近海の島に住んでいたらしいのだが、30年ほど前、内陸にコミュニティを形成した。このツアーではそのコミュニティを訪れた。

ピースボートはこのコミュニティにこれまで支援してきた。今回のツアーでも、P-MACと呼ばれる支援を行った。日本から集めた物資を、ツアーを通して直接届けるという活動だ。

仲の良いスタッフの一人が、かつて中南米の町にP-MACの一環として救急車を届けた話をしてくれた。船の中から日本の救急車が出てきて、「ずっと乗ってたんかい!」とたいそう驚いたのだとか。

ツアーでは文化交流会も行われた。ピースボート側からも出し物をやったほか、現地のロックバンドのライブが行われた。クナ族の神話の世界観をロックで表現したバンドらしい。

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この道路も、ピースボートの支援でできた

ツアーの良いところ

なんといっても、子供たちとの交流だろう。

僕は子供たちに受けるかと、プロレスのマスクを持っていった。

これが予想を大きく超えてバカウケ!

子供たちはマスクを取り合い、正義のレスラーと化して僕に襲いかかってくる。

マスクがない子も僕に襲いかかってくる。

相手は子供なので痛くはないのだが、動きがいいので防ぎきれない。

僕は適度にやられてあげてみたり、逆に全く聞かないアピールをしたりして遊んでいた。

すると、彼らにサッカーに誘われた。

彼らが使うサッカーボールは空気が入っておらず、三日月のようにへこんでいた。

もし、P-MACに物資を提供することがあれば、僕は迷わず空気入れを買って持っていくだろう。まず、人に支援する前に自分のことを何とかしなければいけないのだが。

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こいつらにボコボコにされました

ツアーの悪いところ

まず、暑い。

そして、ツアー中、食事をとるチャンスはほとんどない。

現地の人たちがフルーツを用意してくれるのだが、

申し訳ないが、フルーツだけじゃおなかは満たせない。

何か、おやつを持って行って、行き帰りのバスでつまむことがおすすめだ。

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クナ族の少女たち

乗船した時に参加したピースボートの交流ツアー ペルー・ビジャ・エルサルバドル訪問

ペルーの首都・リマの近郊に「ビジャ・エルサルバドル自治区」という町がある。

40年ほど前にペルーの内戦の難民たちによって、砂漠に作られた街だ。今では数十万人もの人が暮らしている。

砂漠に作られているため、町は常に砂埃が舞っていた。

この地に訪問するツアーはいくつかあるが、僕はあるNPO団体を訪問するツアーに参加した。

この団体は、子供たちの労働を支援している。

児童労働は世界各国で問題になっているが、この街では学校から帰ったら働くのが当たり前。大人たちは基本、優しく見守るだけで、組織の運営、各支部との会合などは、すべて子供たちが手掛けている。

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まさに、地の果ての町だ。だが、この街から見れば、日本の方が地の果てなのかもしれない。

ツアーの良いところ

このツアーの魅力も、なんといっても子供たちとの交流だ。

昼食は子供たちと一緒にレストランへ向かった。

出てきた料理は鳥の丸焼きと、山盛りポテト。

ペルーの中華料理屋に行ったとき、てんこ盛りの皿うどんが出てきたので、やっぱりこっちの子供はこんな量を食べるのかと思ったら、

子供たちは軒並み残してた。そりゃそうだ。

また、折り紙を持って行って、手裏剣や紙飛行機を折って子どもたちと遊んだ。

ここでもマスクが大活躍! 今度は悪役用のマスクをかぶってみたところ、子供たちが喜んで挑みかかってきた。

写真 1188
この広場で遊んでいた

ツアーの悪いところ

このツアーの欠点は、やはり言葉が通じないところだろう。僕のつたない中学英語では全く通じない。

なぜなら、向こうはスペイン語しかしゃべらないのだから。

「船で70日かけてきました」とつたない英語で行ってみたが、全く通じなかった。

何せ、「70days」すら通じなかったのだから。腕時計の前で指をぐるぐるすることで、ようやく何らかの時間の単位であることが分かってもらえた。

「英語は世界どこでも通じる」と思っている人には、ぜひピースボートに乗ってもらいたい。


ツアーは決して安くない。

だが、ツアーでしか知れない知識や、ツアーでしか会えない人もいる。

そして、大事なのは、そこで知ったことだけがすべてではない、ということだ。一つの事柄にはいろんな側面がある。

それが確かめたくて、僕らは地球を一周するんだと思う。

ピースボートのクルーズで訪れた『どこやねん!』とツッコミたくなる5か国

ピースボートのクルーズでは、毎回20ヶ国近くの国を巡る。シンガポール・インド・フランス・スペイン・メキシコなど、日本人になじみの深い国にも行くが、「そこ、どこやねん!」と思わず言ってしまいそうな国にもいく。そんなピースボートのクルーズで行った『どこやねん』な国を5か国、紹介しよう。


ピースボートのクルーズで訪れた『どこやねん』な国 その① カタール

サッカーの試合でなんとなく名前を聞いたことがあるかもしれない。アラビア半島のペルシャ湾に面する国で、人口は200万人。FIFAランクは87位(2016年)。

国名よりも首都の方が、日本では有名かもしれない。

首都の名は『ドーハ』。あの『ドーハの悲劇』の舞台だ。

ドーハの悲劇とは……詳しくはwebで。

ドーハ気候に前日には、船の中で『ドーハの悲劇を再現する』という意味不明な企画も行われた。

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『ドーハの悲劇』の写真と同じポーズを、その身を持って再現しようとするおバカな人たち

カタールの国旗

そんなカタールの国旗がこちら。

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カタールの国旗はデザインが隣国バーレーンの国旗に似ている。

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なぜ、こんなにデザインが似ているのかというと、もともと2つは全く同じデザインだったのだ。バーレーンの鮮やかな赤がもともとの色だった。

ところが、倉庫に置いてあったカタールの国旗の方が、変色してエビ茶色になってしまった。それを見た王様が、

「……ま、べつにいっか」

といったかどうかは知らないが、なんと、カタールの国旗は変色したまま現在に至る。

ちなみに、その後ギザギザの数も変わった。

灼熱の町 ドーハ

さて、ピースボートではドーハに訪れた。

しかし、このドーハ、通称「世界一地味な首都」。

中心地は高層ビルがひしめくが、市街地はどこにでもあるアラブの街並み。

しかし、日本人にとってアラブの世界はなじみが薄いので、それだけでも結構楽しめる。

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町中でラクダにも会える
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どうやらホテルらしい。この写真はむかいのモスクからとっている。

このカタールで押さえておきたい場所が「スーク・ワキーフ」という巨大市場。

地元の人向けの市場で、別に大したもの売っていないのだが(こらこら)、アラビアンナイトみたいな世界を味わいたいのならば、ここがおすすめだ。

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スーク・ワキーフは広いうえに、迷路のように入り組んでいる。迷子にならないように気をつけよう。
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そうだ、アラブに行こう
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アラブの世界に迷い込んだ
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日本でこんな風景はなかなか味わえない
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武器も売っている

ただし、カタールは砂漠の国。めちゃくちゃ熱い。半そで姿だった友人は、なんと腕に水ぶくれができた。社会の教科書に書いてある「アラブの人は肌を出すとやけどするので長袖を着ている」という記述は本当だったのだ。

ピースボートのクルーズで訪れた『どこやねん』な国 その② モンテネグロ

またしても、サッカーの試合でかろうじて聞いたことのあるような国である。

イタリアとはアドリア海を挟んで対岸に位置する国で、人口は約60万人。FIFAランクは63位(2016年)。2006年までは「セルビア・モンテネグロ」という長い名前だった。もっと前には「ユーゴスラビア」という名前だった時代もある。

モンテネグロの国旗

こちらが、モンテネグロの国旗だ。

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旗の後ろに見えるのがフィヨルド

このマークは、ヴェネツィア王国の旗をもとにしている。アドリア海の北に位置するヴェネツィア王国の力は、モンテネグロにまで及んでいたのだ(ちなみに、「モンテネグロ」という名前もイタリア語でる)。どおりで、ヴェネツィアに寄港した時、冗談みたいにデカい宮殿があったわけだ。

フィヨルドと天空の城 コトル

モンテネグロのコトルなんて聞いたこともないし、周りの大人も「何もないよ」と口にしていた。

しかし、実際に上陸してみると、おしゃれな旧市街と、背後の山に伸びる砦、そして、そこから見えるフィヨルドの絶景などがあった。景観は、ヨーロッパの寄港地の中でも一番だった。

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早朝の写真。湖のようだが、フィヨルドである。外海とつながっていて、オーシャンドリームのような客船でも入れる。
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「モンテネグロ」とは「黒い山」という意味。その名の通り、黒っぽい山々が並ぶ。
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おしゃれな旧市街。港から徒歩数分のところにある。

コトルに来た人は、みんな裏山を登って砦に行く。逆に言えばそこしか行くところがないのだが、この砦というのが素晴らしい。石造りの砦だが長い歴史の経過を示すように草木に覆われている。眼下にははるか下にフィヨルドの海。

まるで、天空の城ラピュタである。

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竜の巣を越えた先には、天空に浮かぶ城がありました
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父さんは嘘つきじゃなかった!ラピュタは本当にあったんだ!
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砦からの景色

さらに、お楽しみは出航後にも。フィヨルドならではの景観を船の上から楽しめるのだ。

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フィヨルドに浮かぶ小島。建物は教会だろうか。

ピースボートのクルーズで訪れた『どこやねん』な国 その③ ジブラルタル

生命保険の名前ではない。町の名前である。

ジブラルタルがあるのはイベリア半島の先端。スペインの町のように見えるが、実はイギリス領である。ジブラルタル海峡を挟んでアフリカはすぐ目の前。「ヘラクレスの角」と呼ばれる地中海の玄関口である。

ジブラルタルの旗

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旗には堅牢そうな要塞が描かれている。

だが、実際にはこんな建物はない。

これは、ジブラルタルにそびえたつ天然の要塞「ザ・ロック」を本物の要塞に見立てて描いたものである。

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天然の要塞、「ザ・ロック」

このザ・ロックのせいで、1713年伊スペインからイギリスが奪い取った後、スペインは一度も奪還できなかった。まさに、難攻不落の町なのだ。

おもちゃ箱の町 ジブラルタル

そんなジブラルタルであるが、町はテーマパークのように整然としている一方、住宅地の中に急に古城が出てきたりと、まるでおもちゃ箱をひっくり返したかのような面白い街だ。

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何の像なのかは知らない
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ジブラルタルの街並み
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ザ・ロックへと続く階段
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住民の駐車場と古城が隣接している

また、ザ・ロックに上ると特徴的なのがおサルさん。いたるところで簡単におサルさんが見れる。

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工事中の団地の足場におサルさん

ピースボートのクルーズで訪れた「どこやねん」な国 その④ ベリーズ

いよいよもって、まったく聞いたことがない。位置的には、メキシコの南である。人口は約40万人。FIFAランキングは163位(2016年)。

ベリーズの国旗

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ベリーズの国旗は人の絵が描いてあり、世界的にも珍しい。ここに描かれている人は、この国の主要な人種を表している。左側が国民の半分を占めるメスティソ、右側が黒人由来のクレオールと呼ばれる人種だ。

また、真ん中には造船などの主要産業が書かれている。

海賊のリゾート地 ベリーズシティ

ベリーズの首都、ベリーズシティの写真がこちら。

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海はあんまりきれいじゃない

これは、「ツーリストビレッジ」という、観光客向けのスペースの写真だ。ピースボート側から言われたのはただ一言。

「命惜しければ、このツーリストビレッジから出るな」

それほど、治安が悪い。人呼んで「リアル・ロワナプラ」。

町並みは、カリブ海のリゾート地。このツーリストビレッジを歩いていると、やたらと宝石店が目につく。ベリーズ自体も「カリブ海の宝石」と呼ばれているらしい。

その理由がこちら「ブルーホール」だ。みんな、これを見たさにベリーズへ立ち寄るのだ。

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ここまで、すべて自分で撮影した写真を使てきたが、これはよそのサイトから拝借してきた。高所恐怖症の私がこんな写真撮るわけがない。 出典:http://nagataka-world.seesaa.net/category/21208999-1.html

ピースボートのクルーズで訪れた「どこやねん」な国 その⑤ サモア

だから、どこやねん!

サモアは太平洋に浮かぶ南半球の島国である。人口は約20万人。サモア諸島の西側は「サモア独立国」。東側は「アメリカ領サモア」である。

サモアの国旗

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デザインそのものは、旧宗主国であったニュージーランドの国旗を参考にしているらしい。星のマークは、南半球の国に多くみられる南十字星である。

最後の町 アピア

サモアの首都、アピアには、クルーズの一番最後に訪れた。

これがまた、びっくりするくらい何にもない。

何にもないから、海岸沿いの道を散歩して終わった。

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アピアに停泊するオーシャンドリーム号

ここに来る前に、タヒチのびっくりするほどきれいな海を見てしまったので、正直、サモアの海はあんまりきれいじゃない。

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サモアの教会
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教会の中は風通しがよく、宗教画に現地の人が描かれるなど、キリスト教がサモア風にアレンジされている
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なんかの王様
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ヤシの木
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国会議事堂かなんか

びっくりするほど何もないアピアだったが、一番びっくりしたのは、僕が財布も持たずに、散歩気分で歩いていた、ということである。

完全に、「異国」であることを忘れていた。

最初の寄港地フィリピンでは、バスの窓から見た土埃ひとつで「おお、異国っぽい!」と興奮していたのに。

ピースボートのクルーズで、23個も寄港地を回るうちに、異国という意識が薄れていってしまったようだ。


帰国後、「旅祭2016」に参加した時の話。

世界地図が広げられていて、「自分のいた国にピンを刺してみよう」というイベントがあった。

バックパッカーが集まるイベントだったが、ピンが集まっていたのはインドだったり、西ヨーロッパだったり、メジャーどころが多い。

僕がドヤ顔でモンテネグロにピンを刺すと、周囲にいた旅好きも「え?それどこ?」と反応を示していた。

クルーズの旅はバックパッカーと違い、行先はすでに決められている。それは「不自由」かもしれないが、聞いたこともない国の、聞いたこともない町に連れていてもらえるのもなかなか面白い。

ピースボートの旅は受け身では楽しめない。特に名所のない国にいたら、自分で探せばいい。

自営業の方必読!ピースボートのポスターを貼る6つのメリットと3つのデメリット

自営業をしている人の中には、ピースボートのボランティアがポスターを貼らせてほしいと頼みに来た、という経験を持つ方も多いのではないだろうか。貼らせてあげた方がいいのか。でも、お店に特にメリットないし。そこで今回は、ピースボートのポスターを貼ることのメリットとデメリットを紹介したい。


ピースボートのポスターを貼る6つのメリット

出典:「素材三昧」 URL:http://sozaizanmai.com/

まず最初に、「マレビト信仰」という風習の話をしたい。

古来より日本には「マレビト信仰」という風習がある。よその土地からやってきた神様が、イエやムラに福をもたらす、という考え方だ。そのため、どこのイエでも、よそから来たカミサマを手厚くもてなした。

もてなしたのはカミサマだけではない。旅人もそうだ。

四国には「善根宿」というものがあった。お遍路さんを無料で家に泊め、手厚くもてなすことにより、自分もお遍路さんととな寺ご利益が得られると信じられていたのだ。

なにも「今すぐお金を落とす人」だけが客ではない。今はポスターとチラシしか置いていかなくても、巡り巡って福をもたらすこともあるのだ。

メリット① 新たな出会いがある

ピースボートのボランティアスタッフ(通称:ボラスタ)たちは、だいたい3か月に1回ぐらいのペースで、再び同じ町を訪れる。前回と同じボラスタが来ることもあるし、前回と違うボラスタが来ることもある。だけど、お店側の視点で見れば、3か月に1回のペースで誰かしらピースボートのボラスタがやってくる。

ポスターを貼るのを断っても、ボラスタは毎回店を訪ねるだろう。怒鳴って追い返せば二度と来ないはずだ。ただ、「純粋な客」としてもピースボート関係者が訪れることは二度となくなる。「あの店に行ったら理不尽に怒られた」という話は後世まで残る。ポスターを貼らせられないのなら、やんわりとお断りして、次は客としてきてもらうようにしよう。丁寧に断られれば、ボラスタ側もすがすがしく店を後にすることができ、次は客として訪れることもある。

むしろこれは、「昼日中から仕事もしないで、ただでポスター貼って、『地球一周』という夢を叶えようとしている奇特な人たち」と出会う絶好のチャンスである。彼らはそんなに急いでいないので(急いでる時もあるけど)、話しかけてみれば、彼らの夢の話、先に船に乗った彼らの仲間の話、彼らのそれまでの人生の話など、いろいろと面白い話を聞かせてくれるはずだ。

メリット② 常連客が増える

ピースボートに携わる者は、ポスターを貼ってある店と貼ってない店が並んでいた場合、まず間違いなく貼ってある方に入る。これは船を降りてピースボートに携わらなくなってからも続く。ポスターが貼ってあると、無条件にうれしくなるものだ。

また、ボラスタがその町を訪れるのが2回目だった場合、前にポスターを貼ったお店で食事をとることもある。食事ついでにポスターの張り替えもできるわけだが、前回、その店でポスターを貼った時の「あの店、おいしそうだったなぁ」という記憶に基づくことの方が大きい。

船を降りた後で、ポスターを貼ったお店に友達と食事に行った、なんて話も聞く。

大宮に「楽釜製麺所といううどん屋がある。

大宮ボラセンのメンバーで言ったところ、値段が安く味も良い。

さらに、目立つ場所にポスターが貼ってあったのだ。

それ以来、僕らはことあるごとに楽釜製麺所に足しげく通った。「安くて、うまくて、ポスターが貼れる」と評判の店だったのだ。船に乗っていた時、唯一食べたくなった日本食が「楽釜製麺所」のうどんだった。

「純粋な客として訪れる」というのは、ボラスタにできる唯一の恩返しであり、財布に余裕がある限り、その恩返しを続けていきたくなるものだ。

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楽釜製麺所の釜玉うどん。これに、揚げ玉をたっぷりかけるのがお気に入り。くぅ、たまらん!

メリット③ 勝手に宣伝してくれる

さらに、気前よくポスターを貼らせてくれたなど、印象に残る店はボラスタが勝手に宣伝までしてくれる。

例えば、「一代元」というラーメン屋がある。埼玉県を中心に展開しているラーメン屋だ。

もともと個々のラーメンが大好きで、足しげく通っていたのだが、

なんとこの店、ポスターにも寛大。今まで、5店舗を訪れて、貼ったポスターは11枚。なんと、一度も断られたことがない。

以来、僕はあちこちで一代元を宣伝して回っている。こんな風に。めちゃくちゃうまいうえにポスターも貼れるのだ。あ~、書いてたらまた行きたくなってきた。

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一代元の韓国ラーメン。くぅ、たまらん!

メリット④ お客さんとの会話も増える

お店にピースボートのポスターを貼っておくと、たまにお客さんがポスターのことを聞いてくるらしい。

もちろん、お店の人に詳しい説明などできるはずもない。

だが、ポスターにはチラシが張り付けてあったり、URLや電話番号が書いてある。説明する代わりに、チラシを渡したり、連絡先を教えればいい。

ついでに、ポスターを貼りに来たおかしな若者たちの話でもしてみるといいだろう。お客さんとの会話が増えるはずだ。

メリット⑤ インテリアとして使える

以前、とあるエジプト料理屋さんに貼った時、こんなことを言われた。

「これ、前はピラミッドの写真とかありましたよね?」

「あ~、ありましたよね。僕も、そのバージョン見たことありますよ」

「ね~。ピラミッドが写ってたら、もっとよかったんだけどねぇ」

とまあこんな感じで、お店によってはポスターの写真が店の雰囲気を高める場合もある。3か月ぐらいしたら、全然違うデザインのに変わってしまうのだが。

メリット⑥ 夢への投資

ポスター1枚貼ることで、そのボラスタに約300円寄付した計算になる。もちろん、お店側は1円もお金を払わない。本来、ピースボートがボラスタに請求するはずだった乗船費用が、300円マイナスになる、というシステムである。

こちらは1円も損しない募金と言えば分りやすいだろうか。

募金の場合「金の使い道」というのがよく問われる。日本はNGOやNPOへの警戒心が強いので、募金の透明化はどこの団体にも求められている。

だが、このシステムは純粋に「ボラスタの乗船費用の割引」にしかならない。他の使い道はありえない。なぜなら、ポスターをお店に貼ったところで、ピースボート側には1円もお金が入ってこないからだ。むしろ、ポスターの印刷代がかかっている分、赤字である。

募金とは、身もふたもない言い方をすれば、わずかなお金で「今日はいいことをした」というすがすがしい気持ちを買う行為である。そういう意味では、ポスターは最良の募金だと思う。

ピースボートのポスターを貼る3つのデメリット

ここまではポスターを貼るメリットについて書いてきた。過去にポスターを3000枚貼ってきた者としては、ポスターが貼れる店が一つでも増えてほしいのだが、デメリットを書かないのはアンフェアだ。ここから先は、ポスターを貼ることのデメリットを書こうと思う。

デメリット① ズバリ、邪魔

ポスターを貼ることの最大のデメリット。それはずばり、邪魔だということだろう。

縦は約50㎝、横は約40㎝。結構な大きさである。これが50枚、60枚となると結構な重さで、もって歩くのもなかなかに大変だ。

お店によっては、自分たちの店や商品に関するポスターを貼らなければいけない場合もある。そういう場合、このサイズのポスターは純粋に邪魔である。これが、ポスターをお店にはることの最大のデメリットだろう。

デメリット② 他のポスターも貼らなければいけなくなる

たまに、このような理由でポスターを断られることがある。もっともな意見だ。

街に出てお店を回り、ポスターを貼ってもらえるよう交渉しているのは、ピースボートだけではない。探偵事務所だったり、ペット美容室だったり、さまざまな企業が「ポスターを店に貼る」という宣伝方法をとっている。また、地元の学校の文化祭のポスターや、選挙ポスターなどもある。ピースボートに限らず、ポスターという宣伝の仕方はやはりバカにできないのだろう。

1回こういうのを許してしまうと、他のポスターも断れなくなってしまう。「なんでピースボートはよくて、うちはダメなんだ?」といった具合に。人が良いのか、いろんなポスターに埋め尽くされたお店を何度も見たことがある。

「ポスターを貼ったことにより店の外観を損ねた」のか、「ポスターを貼ったら殺風景なガラス窓がカラフルになった」のか、受け取り方はその人次第だろう。

デメリット③ 店の雰囲気に合わない

ポスターが店の雰囲気に合う場合があれば、もちろん、雰囲気に合わない場合もある。蕎麦屋やすし屋など、和風なお店がそれである。

こういう店ではあまり貼らせてもらえない。理由はやはり「店の雰囲気に合わない」ことだろう。

「地球一周の船旅」である以上、写ってる写真はヨーロッパの街並みやピラミッドやモアイ像が多い。やはり、和風なお店には合わないようだ。

以前、僕が貼っていたポスターにはでかでかと、サンバを踊るブラジル人美女の写真が載っていた。

これが和風な店での成功率がすこぶる悪い。もっとも、僕も店に入る前から「あきらかに店の景観と会わないけど、念のために行ってみるか」という感じだったので、断られても「ですよねー。お時間とらせました~」といった感じで大してダメージを受けることはなかった。

ピースボートのポスターってどこに貼ればいいの?

さて、いざポスターを貼るとなって、一体どこに貼ればいいのか。

実は、決して店の目立つところに貼らなければいけない、というわけではない。貼らせていただけるのであれば、どこだろうとありがたい。

例えば、物がごちゃごちゃ置いてあって、そこに貼っても全体の4分の1しま見えないような場合。

問題ない。4分の1も見えていれば、十分だ。

人目に付くのであればトイレでも構わない。お店側は「そんなトイレなんかに貼っちゃって悪い」と遠慮することがあるのだが、トイレのポスターから地球一周の扉をたたいた人は結構多い。

さらに言えば、別に客の目に触れなくてもいい。ポスターを見る人はお店の従業員でも構わないのだ。つまり、店のバックヤードの殺風景な場所でも構わない。

あるお店なんか、壁に穴が開いちゃた所にポスターを貼っていた。だから、逆にポスターをはがせないのだとか。そんな使い方で全然かまわないない。

ポスターを途中で剥がしたくなった時はどうすればいいの?

一度ピースボートのポスターを貼ったが、お店の都合で別のポスターを貼らなければいけないなど、ポスターをはがさなければならない場面もあるだろう。そんな時はどうすればいいのか。ピースボートに連絡すればいいのか。

連絡する必要はない。

お店に貼った時点で、もう、ポスターは店の所有物だ。お店の判断で自由にはがして、捨ててしまってかまわない。

「一週間たったらはがす」という条件のもと貼った店もいくつもある。そういう店でもやはり人がいいのか、半年ぐらい貼っていてくれた場合もあったが。

はがすときは、ちょっと引っ張れば簡単にはがせる。ガラスにテープがついてしまうこともあるが、爪でひっかけば簡単に取れる。

まとめ ピースボートのポスターは貼った方がいいの?

貼ることのメリットは簡単に言えば「善意の輪が広がる」という点だろう。それが客を増やすことにつながることもある。

一方、やはりデメリットは「景観を損ねる」ことだろう。

善意をとるか、景観をとるか。

僕は、ひいき目なしに、商売上手な店というのは、こういう場面で「善意」を選べる店だと思う。根拠は、1万以上の店をポスター背負って回った経験でしかないのだが。

ピースボートのボラスタがどんな生活をしてるかはこちらの記事で!

ピースボートのボランティアスタッフになったらこんな毎日だった